Abstract : |
肺の良性腫瘍は全肺腫瘍の2~5%を占めるにすぎない. 中でも稀な組織球腫の再発例を報告する. 症例は39歳男, 3年前健康診断で右肺の異常陰影を指摘され, 胸部X線写真で中下葉間に円形陰影あり, 腫瘤摘出術施行, 腫瘤は用指的剥離容易であり完全に摘出され, 組織球腫の病理診断を得た. 術後経過良好であったが, 一年前再び健診で異常を指摘された. 胸部X線写真で前回と同じ部位に円形陰影を認め, 再発と考え再開胸した. 肺実質は壁側胸膜と強く癒着し, 剥離操作中に肺実質を断裂し, 出血, 空気漏れ強く, 中葉切除術を断念し, 右肺全剔出術施行した. 腫瘤はS5にあり, 葉間に半球状に突出し, うずら卵大, 硬度軟, 割面は黄白色一部暗赤色, 組織像は基本的に前回と同じであり, 組織球腫と診断された. 組織球腫は, 硬化性血管腫, 線維黄色腫などともに, 分類, 成因について議論のあるところである. 成因には, 腫瘍説と炎症説とがあるが, われわれの症例は, 1)びまん性の組織球を主体とする細胞増殖, 2)正常肺実質内への浸潤像, 3)移行部に炎症に見られる細胞浸潤, 肉芽性変化のないことなどから腫瘍である可能性が強いと考えられた. 肺硬化性血管腫, 組織球腫の本邦報告例59例を集計し, その臨床的特徴を検討した. 治療は, 肺切除術, 肺葉切除術, 区域切除術, 部分切除術, 腫瘤摘出術などがなされている. 予後は良好で再発例は報告されていない. われわれの症例の再発の原因は不明であるが, 再手術時の組織像に, 腫瘍が正常肺実質の中へ線維性被膜を破り浸潤している像があることから, 初回手術時に腫瘍を取り残した可能性もある. 組織球腫は, 良性疾患であるので, できる限り肺実質を温存する手術を選択すべきであるが, 腫瘤摘出術のみでは不充分と考える. |