アブストラクト(27巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心臓内伏針の外科治療における問題点
Subtitle :
Authors : 草場英介, 調亟治*, 釘宮敏定, 賀来清彦, 黒岩正行, 福島建一, 高木正剛, 葉玉哲生, 柴田興彦
Authors(kana) :
Organization : 長崎大学第1外科, *大分医科大学外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 8
Page : 1085-1090
Year/Month : 1979 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心内伏針本邦症例数は著者らの調べ得たところでは現在38例であり, 著者らも3例を経験した. 症例1の心内伏針は鍼灸針によるものであった. 心筋硬塞様の発作に始まり, 心外膜炎を経験し右室流出路にある鍼灸針を体外循環下開心術により摘出し, 症例2, 3はいずれも縫針による伏針であった. 症例2は左室心筋内に刺入されており, 腐蝕が著しく周囲組織との癒着も強いため, 針は抜去中折損し一部が心筋内に残存したが術後心機能に異常なく経過は順調であった. 症例3は2本の縫針が左室心筋内に認められた.針はやはり腐蝕が著しく周囲との癒着が強いため可及的に摘除するのみで左室心筋に深く埋没した部分は症例2の経験から無理に摘除を行わなかった. 本邦の他の伏針症例の手術適応をみると, 刺入より摘出までの期間が短かく, いずれも積極的な摘除を推奨しており, 抜去も容易であったと記載されている. 著者らの3症例は比較的長期経過例であった. 症例1の鍼灸針は10年後に摘除されたにも拘らず針は全く銹びておらず, 身体内部を自由に移動し得たものと考えられた. 事実術後左肩甲部の他の針が移動して左鎖骨下動脈領域に血腫を形成している. 症例2, 3の伏針は縫針であり, 胸部X線写真では針は細片に断裂破壊された部分, 大小不同の部分などが認められる. これと摘出標本および周囲組織の病理標本を併せて検討してみると, 縫針が組織内に固定されると銹を生じ, 結合織で強固にかこまれ, 時間とともに酸化が進行し, 次第に折れたり崩壊したりして分散吸収されて行くものと推測された. 以上の経験から著者らは陳旧性の心内伏針の手術適応を次のように定めた. 1)心内伏針が鍼灸針であれば, 直ちに摘除術を施行する. 2)心内伏針が縫針であり病歴が長くX線上針陰影に断裂, 大小不同が認められるときには伏針移動の危険性も少く摘除せずに経過観察を行うのみでよい.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心臓内伏針, 鍼灸針, 縫針, 伏針陳旧例, 心内伏針X線所見
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