アブストラクト(27巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 弁膜症に対する開心術後の不整脈に関する研究―血中ジゴキシン濃度を中心として―
Subtitle :
Authors : 大路明, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 8
Page : 1115-1124
Year/Month : 1979 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 術前よりジゴキシンが投与されていた後天性弁膜症患者20例(男性9例, 女性11例)を対象とし, 術前, 術中, 術後の, 血中ジゴキシン濃度を, ラジオイムノアッセイ法で測定し, 術後の不整脈発生との関連性の究明を試みた. 対象を, ジゴキシンの投与期間により分類し, 7ヵ月以上の10例を長期投与群, 3ヵ月以下の10例を短期投与群とした. 全症例とも, 原則として, 術前24時間, 術後24時間は, ジゴキシンの投与を中止した. えられた結論は, 以下のごとくである. 1. 術後には, ジゴキシンが投与されていないにもかかわらず, 60%(12例)の症例に, 一過性の血中ジゴキシン濃度の上昇が現われ, これは, 体外循環終了後6~21時間(平均10時間)に多く, うち半数(6例)では, 中毒域の2.0ng/ml以上に達した. 2. 開心術後血中ジゴキシン濃度上昇例についてみると, 術後のジゴキシンの投与期間が長く, 投与量も多量に及んでおり, 術前の濃度も高値を示した症例が多かった. 長期投与群10例では, 全例において, 術後に血中ジゴキシン濃度の上昇がみられた. 3. 開心術後の血中ジゴキシン濃度の上昇と, 術前のジゴキシン投与中止期間, B.U.N.値, C.T.R.体外循環時間及び大動脈遮断時間との間には, 直接の関連性はみられなかった. 4. 開心術後のジゴキシンの投与の再開時には, 血中ジゴキシン濃度が急上昇する症例が予想以上に多い.再開は術後24時間以上経過した後が望ましく, 投与時には細心の注意を払うことが必要である. 5. 開心術後の不整脈が8例においてみられ, うち4例では血中ジゴキシン濃度の上昇時に一致して発生し, 下降とともに消失した. 不整脈発生とジギタリス投与との関連性には, 常に注意しつつ, 術後管理に当ることが大切である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 血中ジゴキシン濃度, ジキタリス中毒, 開心術後不整脈, 術後管理, ジゴキシンの代謝
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