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本研究において116例の食道癌切除標本について, 準連続切片を作製し, その組織学的検索を行い, 癌の壁内進展様式に基づく癌形分類を試みるとともに, 多癌型の病理組織学的事項および, 予後を検討し, 食道癌の治療成績向上に役立てんとした. 壁内進展様式から, 比較的限局型59％, 浸潤型9％,リンパ行性転移型13％, 多中心性発育型15％, 表層拡大型3％の5型に分類し分析を行った. 主癌巣から口側, 肛門側への進展方向および距離は, 浸潤型, 多中心性発育型では, 口側に進展の認められる例が多く, 逆にリンパ行性転移型では肛門側に進展した例が多かった. 進展距離は非連続性に癌巣の認められたリンパ行性転移型で口側平均3.1cm肛門側平均3.5cm, 多中心性発育型で口側平均3.9cm肛門側平均2.8cmであり, 浸潤型, 表層拡大型に比較し, 遠隔部に癌巣が認められた. 主癌巣の壁深達度は, リンパ行性転移型, 浸潤型, 比較的限局型の順に外膜浸潤陽性例が多く, 多中心性発育型, 表層拡大型では癌腫の浸潤が外膜にまで達していない例の占める割合が高かった.リンパ節の転移率・転移度とも, 比較的限局型が他の型に比較して低値をとり, リンパ行性転移型ではn3（＋）n4（＋）多中心性発育型, 表層拡大型ではn2（＋）例が多かった. 組織学的分化度は, 浸潤型, 多中心性発育型, 表層拡大型に低分化型例が多かった. 照射およびブレオマイシン投与の術前治療効果との関係では比較的限局型に著効例が多く, 浸潤型, リンパ行性転移型では無効例が多かった. 予後は比較的限局型では3年生存率, 5年生存率とも43％と良好であったが, 浸潤型は3年生存率27％, 5年生存率9％, リンパ行性転移型3年生存率0％, 多中心性発育型3年生存率12％, 5年生存率0％と極めて不良であった. 今後, このような臨床的に悪性度の強い症例に対しては, 手術, 照射, 化学療法, 免疫療法の効果とその選択についての検討が不可欠と思われる. |
