アブストラクト(27巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Extended Aortoplastyによるビマン型大動脈弁上狭窄症の1手術治験例
Subtitle : 症例
Authors : 相馬康宏, 伊藤豊彦, 吉津博, 茅野真男*, 高橋哲夫*, 小野康平*, 川田光三**
Authors(kana) :
Organization : 足利赤十字病院循環器科, *足利赤十字病院内科, **慶応義塾大学外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 8
Page : 1183-1189
Year/Month : 1979 / 8
Article : 報告
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大動脈弁上狭窄症(SAS)の限局型には, パッチによる狭窄解除が有効であるが, ビマン型には, この術式の成績は一般に不良である. 最近, われわれは腕頭動脈および上行大動脈に動脈瘤を有するビマン型の本症にDotyら12)のExtended Aortoplastyを応用して中枢側吻合口を形成し, 上行, 弓部大動脈および腕頭動脈を人工血管にて置換し, 良好な成績を治めえた1例を経験したので報告する. われわれの知るかぎりでは, SASのビマン性狭窄を人工血管にて置換した症例の報告はない. 症例は31歳, 女子で発熱を主訴として来院. 血液培養にてStreptococcus sanguisが分離された. 化学療法により良好に経過していたが, 入院32日目に上腸間膜動脈閉塞を併発し, 腸切除術を行った, 閉塞部には化膿性動脈炎の存在が確認された. 心カテーテル検査で狭窄部に95mmHgの収縮期圧較差が認められた. 大動脈造影でビマン性の弁上狭窄, 腕頭動脈および上行大動脈の動脈瘤, 右冠状動脈の拡張, 蛇行が認められた. 体外循環下に, 無冠状動脈洞と右冠状動脈洞の2ヵ所で狭窄輪を切除し, 中枢側を2股にした幅4.5cmのパッチを用いて, 中枢側吻合口を径2.0cmに形成した. 左総頚動脈と腕頭動脈の間で弓部大動脈を横断し, 上行・弓部大動脈及び腕頭動脈を人工血管で置換した. 術後は全く良好に経過した. 収縮期圧較差は15mmHgと激減し, 左室圧も250/22mmHgから155/12mmHgと低下していた. 大動脈造影でも狭窄は認められなかった. 患者は術後8カ月の現在, 正常な日常生活を送っている. ビマン型の本症に長大なパッチを用いる場合には, 人工血管置換時より, さらに末梢の大動脈に遮断鉗子を置くことが, 通常必要となると思われる. 上行大動脈全長におよぶようなビマン型の成人例では, 今回報告した術式による人工血管置換術も有用な方法となりうると考えている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁上狭窄症, 総腸間膜動脈閉塞症, Elfin Face, Extended Aortoplasty, 上行・弓部大動脈置換術
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