アブストラクト(27巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 総肺静脈還流異常症を合併したファロー五徴症の一根治手術成功例
Subtitle : 症例
Authors : 宮本勝彦, 川島康生, 森透, 大西健二, 中埜粛, 橋本純平, 曲直部寿夫, 吉矢生人*, 小塚隆弘**, 藤野正興**
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科, *大阪大学医学部集中治療部, **大阪大学医学部放射線科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 8
Page : 1190-1195
Year/Month : 1979 / 8
Article : 報告
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : ファロー四徴症に総肺静脈還流異常症を合併することは極めて稀であり, その一期的根治手術の成功は本例が初めてであると思われたので, 診断, 治療上の問題を含め報告した. 症例は, 2歳5ヵ月の女児で, 1歳9ヵ月時の心カテーテル, 心血管造影で, situs inversus totalis, ファロー五徴症, 奇静脈連結, 右上大静脈遺残と診断し, 昭和51年5月25日根治手術を施行した. この際, 上記診断以外に, 全肺静脈が右房に還流していることが判明した. これに対して, 心房中隔欠損を拡大した後, 肺静脈から心房中隔欠損を通して左房へ血液が還流するように心膜を縫着した. 術後血行動態は不安定で, 気管切開を要したが次第に改善し, 術後72日目の検査では, 右室/大動脈収縮期圧比は0.37と著明に低下し, 肺動脈造影でも心膜baffleの前後に狭窄は認めず術後85日目に退院した. 本例においては, 術前には心臓部還流型の総肺静脈還流異常症が合併していることを診断できなかったが, 術後の再検討で, 左右肺静脈の合流部が通常よりやや左方へ偏位していること, 肺静脈から心房へ造影剤が流入した直後に右室が造影されていること, またこの心房に造影剤が流入した時期に, 肝静脈への逆流がみられることなどより診断可能ではなかつたかと思われる. また本例は幸いにして救命しえたが, 術後は血圧, 左房圧の変動が容易に起こり順調なものではなかつた. その主たる原因としては, 心房内に形成した心膜トンネルが, 左房圧の変動により容易に圧迫され, 左心系の還流障害を来たしたためであろうと思われた. したがって, このような場合での心房内トンネル作成に際しては, その材質に考慮を払うべきであり, 心膜よりは, より剛性のある材料を利用すべきであったと反省している.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 総肺静脈還流異常症, ファロー四徴症, 全内臓逆位, 奇静脈連結
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