アブストラクト(27巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 表面冷却低体温時の体内電解質分布の変動とくにエーテル深麻酔とバービチュレート麻酔との比較
Subtitle :
Authors : 前田喜晴, 杉江三郎
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学医学部第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 9
Page : 1250-1259
Year/Month : 1979 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 低体温麻酔中に発生する心室細動と冷却中に進行する低K血症との関連が問題となって久しい. また冷却中の低K血症は同様に発生するのにもかかわらず, 心室細動の発生はエーテル深麻酔では非常に少なく, 他の比較的浅麻酔と考えられる麻酔中により発生しやすいことが知られている. 著者はこの両麻酔における低温時の電解質分布の変動を比較することにより, 冷却中の不整脈の原因を解明すべく実験的研究を行った. 雑種成犬を用い, エーテル深麻酔群とバービチュレート麻酔群に分け, 表面冷却を行った. 両群において常温時と20℃冷却時に採血し, 血清Na, Cl, Ca, K, Mg, 赤血球内Kを測定し, また, 同時に肺, 心筋, 肝, 腎, 横紋筋の5組織を採取し各組織内, Na, K, Mgの直接測定を行った結果, 次の知見を得た. (1)血清Na, Cl, Ca, Mgおよび赤血球内Kには両群とも有意の変動は認めない. (2)血清Kは両群とも20℃で有意の低下を認めた. (3)両群とも20℃で肝内Kの増加傾向を示した. (4)心筋内Kがエーテル深麻酔群において20℃で増加を示したのに対し, バービチュレート群では逆に減少を示し, また両群の常温値に対する20℃値の変化率の間に有意差が認められた. (5)20℃時に組織内Kの増加が大きい組織ではNaが逆に同程度減少する傾向を示した. (6)心筋内Mgは20℃で両群とも減少傾向を示した. 以上より, 低体温時に低下した血清Kの肝内への移行は麻酔方法とは関係なくおこり, 低体温そのものに共通して起こる変化と考える. エーテル深麻酔法と他の浅麻酔法との間に冷却時不整脈発生頻度に大きな差がある理由として, ここにみられた低温での心筋内K値の差が重要な役割を果しているのではないかと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 低体温, 冷却時心室細動, 組織内電解質, 心筋内K
このページの一番上へ