Abstract : |
急性心筋梗塞(AMI)に合併する僧帽弁逆流(MR)の予後はきわめて悪い. これに対処すべく, 著者はMRおよびAMI+MRモデル犬を作成し, これらの犬に対するIABPの効果を検討した. MR作成により, 左室収縮期圧はもとの値の平均67%に, 心拍出量は62%にいたるまで低下し, 左房平均圧は3.8mmHgから17.4mmHgへと著明に上昇するなど, 血行動態が著しく悪化したが, IABPの実施により, 左室収縮期圧は7%下降, 心拍出量は23%増加, 左房平均圧は2.2mmHg(13%)下降するなど, 血行動態の改善が認められた. 一方, AMI+MR作成犬では, 左室収縮期圧はもとの値の58%, 心拍出量は55%にいたるまで低下し, 左房平均圧は4.9mmHgから17.6mmHgへと著明に上昇し, 血行動態はAMIの合併により, MR単独犬よりもさらに悪化したが, IABPの実施により, 左室収縮期圧は9%下降, 心拍出量は30%増加, 左房平均圧は3.0mmHg(17%)下降するなど, IABPの効果はMR単独犬に比較してより著明に認められた. この事実は, AMI+MR犬においては, MRの他に虚血心筋が共存しているために, IABP本来のdiastolic augmentationとsystolic unloadingの両者の効果が同時に発揮されたゆえと推察された. さらに, 左房圧の上昇の度合いとIABPの効果との関連について検討したところ, 左房平均圧が30mmHg以上におよんだ犬では, IABPの効果が得られても一時的で, 肺浮腫から肺出血を招来して死亡した事実から, MRに対するIABPの効果の限界は, 左房平均圧30mmHgと結論された. |