アブストラクト(27巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺水腫に及ぼすPositive End-Expiratory Pressure(PEEP)の作用機序に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 堀江信治, 数井暉久, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学外科学第2講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 10
Page : 1352-1365
Year/Month : 1979 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Positive End-Expiratory Pressure(PEEP)の作用機序に関しては未だ論議の多いところである. 著者らはPEEPの肺水腫に及ぼす影響について実験的検索を行った. 肺水腫の作製法としては雑種成犬に乳酸リンゲル液20ml/kgを点滴静注し, ついで開胸して左房内に挿入したFoleyバルーンカテーテルを膨張させて左房圧(LA)を上昇させた. 血漿膠質浸透圧(COP)はOncometerを用いて測定し, 胸腔内圧(IPP)は閉胸後に測定した. 以上の測定値よりLAを(LA-IPP-COP)の圧較差が約7mmHgになるように調整し, 120分維持した. 機能的残気量(FRC)はnitrogen wash-out methodを用いて測定, シャント率(Qs/Qt)は100%O2を20分間吸入後, 公式より算出した. 肺組織の水分含有量の測定には実験終了後, 動物を犠牲死させ肺含水量比(W/D ratio)および肺重量体重比(L/B ratio)を求めた. 実験動物を肺水腫作製後2群に分類し, 第I群7頭に0 PEEP, 第II群7頭に10cmH2O PEEPで120分間換気した. 両群ともに乳酸リンゲル液点滴後COPは著明に減少し, これと平行して総蛋白量も減少した. またヘモグロビンとヘマトクリットは徐々に上昇した. W/Dは第I群では5.53, 第II群では5.36であった. またL/Bは第I群では1.11, 第II群では1.19であり, 両群の肺水分含有量には有意の差はみられなかった. なお対照としての正常犬のW/Dは4.33, L/Bは0.74であった. Qs/Qtは第I群では25.16%, 第II群では16.62%と, 第I群の方が高かった(P<0.01). FRCは第I群では1.15L, 第II群では1.71Lであり, 第II群の方が高かった(P<0.01). 以上の結果よりPEEPの肺水腫に対する作用機序としては, PEEPは肺の水分含有量に及ぼす影響は少ないが, FRCを上昇させ, シャント率を減少させることから, 虚脱した肺胞を膨脹させて無気肺の予防および改善に役立つものと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : PEEP, 肺水腫, FRC, シャント率, 肺水分含有量
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