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低心拍出量症候群は, 依然として重大な開心術後合併症であり, その原因は術中心筋保護の優劣に負うところが大きい. 心筋保護法の中で心筋代謝抑制を目的とした心筋冷却保護法は多くの利点を持ち, 最近注目されているが, その方法は確立されていない. そこで実験的に種々冷却保護中の心筋の生化学的検索により, 阻血心筋の嫌気性代謝状態を知り, 冷却法, 冷却液組成について探究した. ついでその結果を臨床的に応用し, 検討した. 実験的に雑種成犬20頭の正常心を用い, 体外循環下120分の上行大動脈遮断を行い, I）室温放置群（常温コントロール群）, II）心筋局所冷却群, III）心筋局所冷却＋0～4℃乳酸加リンゲル液冠潅流冷却群, IV）心筋局所冷却＋0～4℃ Glucose Insulin Karium液（GIK液）冠潅流冷却群の3種の冷却法を行い, 経時的に心筋を採取して, 心筋内グリコーゲン, アデノシン三燐酸（ATP）, クレアチン燐酸（CP）および乳酸の測定を行った. その結果, グリコーゲン, ATP.CP.の減少率は, 常温放置群（I群）と冷却群（II,III,IV群）間には有意差を認めたが, 冷却群(II, III, IV群）相互間には有意差を認めなかった. 乳酸の増加率はI, II, III, IV群の順に大きく, 群群間に有意差を認めなかった. しかし冷却群におけるグリコーゲン, ATP. CP.の減少率と乳酸の増加率は, IV群が最も軽度であり, IV群すなわち心筋局所冷却＋GIK液冠潅流冷却群が最も優れていることが判明した. 以上の結果から臨床的に心筋局所冷却＋GIK液冠潅流冷却心筋保護法を応用し, 最高141分の上行大動脈遮断を安全に行いえた. |
