アブストラクト(27巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁, 三尖弁同時置換術後の遠隔期における運動負荷時の血行動態に関する研究―Impedance Cardiographyによる 心拍出量の変動を中心として―
Subtitle :
Authors : 高島哲, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 10
Page : 1375-1383
Year/Month : 1979 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 重症の僧帽弁膜症には三尖弁閉鎖不全が合併することが多いが, 高度の三尖弁閉鎖不全に対しては止むなくTVRを行わざるをえない場合がある. ところで, MVRと同時にTVRが行われた症例では, 術後の激しい労作時や, 発熱時に, 一過性の心不全症状に陥る事実が観察されるのに鑑み, 著者は, この原因を究明したいと考え, 本研究に着手した. 正常人11名を対照とし, MVR群12例, MVR+TAP群6例, MVR+TVR群13例に対して, ergometerによる運動負荷を行い, 心拍出量(CI)の変動をImpedance cardiographyにより連続的に測定した. まず正常人では, 運動負荷に伴ってCIが急速に増加し, さらに負荷を続けると, CIは安静時の値の50%以上も増加して, 恒常状態に達した. MVR群では, 12例中9例で50%以上のCIの増加が認められたが, これに反してMVR+TVR群では, CIの増加はわずかであり, 50%以上の増加を示した症例は13例中2例にすぎなかった. 次に安静時のCI, さらに運動時のCIの増加率, 行いえた総運動負荷量などについて検討したところ, いずれの値もMVR+TVR群では, 正常群およびMVR群に比し, 有意差をもって低値を示すことが判明した. 一方, 術前の重症度を, 年齢, 病悩期間, CI, EF, Rp/Rsについて, 各群別に調べたが, 術前の重症度と術後運動負荷時のCIの変動との間に, 関連を見出すことができなかった. 以上の成績から, MVR+TVRの術後にみられる労作時および発熱時の一過性の心不全症状は, 術前の重症度の状態と関連があるというよりも, むしろ運動負荷時にCIが増加せず, 低値のままでとどまるという事実に由来しているものと考えられ, その原因は, 三尖弁口に置換された人工弁が, 十分な機能を営みえないことに影響される故であろうと結論された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 運動負荷, Impedance Cardiography, 三尖弁置換術, 人工弁機能
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