アブストラクト(27巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 先天性心疾患における刺激伝導系灌流動脈の病理形態学的研究―心室中隔欠損症・Fallot四徴症に関して―
Subtitle :
Authors : 小泉潔, 庄司佑, 矢島権八*
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学第三外科学教室, *日本医科大学第一病理学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 10
Page : 1425-1442
Year/Month : 1979 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 過去5年間の開心術症例の内, VSD 48例, TOF 17例の計65例の術前心電図にて, 前者に22%, 後者の11%に何らかの伝導遅延を認めたため, 心室中隔欠損が刺激伝導系および潅流動脈に如何なる影響を与えるのかを病理形態学的に後者を主に観察した. 対象はVSD 6例, TOF 5例でLevの方法により連続切片を作製し, 洞房結節のCentral Artery, 房室結節から左右両脚を潅流する7本の冠動脈を再構築により定め, 動脈硬化性血管傷害を, 1)内腔狭窄, 2)内膜肥厚, 3)筋弾性線維層形成, 4)血管周囲線維化の4点から観察し, I群:変化がないか極く軽微, II群:軽度~中等度の変化, III群:中等度以上高度の変化の3群に分類した. その結果, 小動脈系では, 洞房結節のCentral Arteryでは, VSD症例において, すでに2ヵ月, 3ヵ月症例からII・III群が50%以上を占め, TOFでは, 2~4歳例からII群の割合が増加していた. 房室結節から左右両脚にかけても, 2歳以下の症例で, 右冠動脈系でIII群の占める率が, TOF 2.7%, VSD 8.7%であり, 左冠動脈系では, TOF 13%, VSD 18%と, ともにVSD例に高度であった. 細小動脈系でも同様の傾向を示し, 房室伝導遅延例, 脚ブロック例の両者に共通してHis束から左右両脚にかけての動脈に高度の所見を認めた. これらの血管傷害は, 末梢循環不全が基盤と考えられるが, VSD例により高度の傷害を来たした要因として, 末梢循環障害に加えて, 心室中隔欠損孔を介した左-右短絡路により常に大動脈弁下に渦流を生じ, 冠動脈内はその影響を受けて中枢側からも常に変動し, その結果, 小動脈系での内膜から中膜にかけての内膜肥厚, 内弾性板の分裂・層形成から線維性硬化を惹起し, 細小動脈系では, 外膜の線維性肥厚と血管周囲線維化をより高度に招来すると考える. これらの血管傷害が, 伝導系に実質的な障害を与えるのは, 血管周囲線維化がより高度になった時点と考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 刺激伝導系潅流動脈, 心室中隔欠損, 若年者動脈硬化性血管傷害, 末梢循環不全, 大動脈弁下渦流
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