アブストラクト(27巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 左房へ還流する左上大静脈遣残症の血流処置単純結紮術に関する考察
Subtitle :
Authors : 山田学, 藤井尚文, 宮沢総介, 安西信行
Authors(kana) :
Organization : 国立東長野病院長野循環器センター
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 10
Page : 1448-1452
Year/Month : 1979 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 不完全型心内膜床欠損症で左房に偏位した冠静脈洞に左上大静脈が還流していることが術中に判明した症例を経験した. この左上大静脈に対し, 術中の単純遮断に引き続き結紮術を行ったが術後一過性に頭蓋内圧亢進によると考えられる傾眠状態がみられた. 単純結紮術により上昇した左上大静脈圧は3日以内に正常値へ近づくといわれる. われわれの症例では内圧低下に5日間を要しており, 高い左上大静脈圧が長期間持続したことが傾眠状態の原因と考えられる. 左上大静脈遺残症で左上大静脈を閉塞して造影することにより種々のrun-off routeがあり, run-off抵抗の高いrouteと低いrouteがあることが証明されている. われわれの症例の術後静脈造影検査では左無名静脈は欠損しており, 左上大静脈の血流は主に縦隔内のrun-off routeを経て右房へ転換されていた. 結紮後の左上大静脈圧低下に長期間を要した事実から, このrun-off routeはrun-off抵抗の高い例と考えられる. 左房へ還流する左上大静脈の血流処置の方針を決定するうえで閉塞テストと静脈造影は非常に重要で, 術前にrun-off routeを正確に把握する必要がある. run-off抵抗の低い例では結紮直後の上昇した大上大静脈圧は短期間に低下することが期待され, 単純結紮術を行っても問題はないと思われる. しかし, われわれの経験した症例のようにrun-off抵抗の高い例での単純結紮術は閉塞テストを行うなど慎重にその適応を決定すべきであると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 左上大静脈遺残症, 左上大静脈左房還流, 心内膜床欠損症, 左上大静脈結紮術
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