Abstract : |
心筋組織血流の変化を連続的に測定, 記録しうる方法として, 交叉熱電対法を用いた. 今回はその基礎的検討を行うとともに, 犬を用い, 本法の妥当性を検討した. まず, 心内膜側心筋用として7mm, 心外膜側心筋用として3mmのheated needleとreference needleから成る針型エレメントを作成し, この2つのエレメントの補正電圧を同一にするため, それぞれの抵抗を10.5Ωに統一した. これにより, 心内, 外膜側の組織血流を同時に測定できるようになった. 本エレメントで心筋組織血流を測定する場合, 加熱電流は50~80mAが適当で, 流量増加時および減少時にほぼ同一な反応を示した. 流れに対して, 逆行性および順行性に本エレメントを挿入しても, 同様な傾向を示したが, 両老間で熱起電圧(μv)に差が生じるため, 常に同一方向に挿入すべきである. 次に環境温度変化の影響を検討した. エレメントを挿入した心筋ブロックを緩徐に加温した場合, 基線は安定しており, また水中にエレメントを挿入し, これを加温したところ, 加温とともに補正電圧(μv)は僅かに上昇した. しかし, これらは静的状態における検索であり, 実際に流れのある環境においては, 充分温度変化の影響が考えられる. 犬心筋において, 心筋内, 外膜側の組織血流を測定した. 脱血, 輸血により, 動脈圧を変動させたところ, 血圧の低下につれ, 心筋内膜側の血流が著明に減少し, 心筋内, 外膜側血流比は平均動脈圧の変動に一致して, 変化した. 本法による正常の内, 外心筋層の組織血流比は平均90%であった. われわれの用いている心筋保護法, すなわち冷却GIK液冠潅流+心局所冷却にて90分間冠血流遮断を行い, 遮断解除後の心筋組織血流の変化を測定したが, 反応性充血は主に外側心筋層において生じ, 内側心筋層の血流改善は緩徐で, 両者が安定するのに約6分を要した. |