Abstract : |
体外循環下開心術症例57例と対照手術症例19例の総計76例を対象として, 開心術に伴う外科侵襲の内因性カテコールアミン代謝への影響を比較した. 開心術症例では, 体外循環中に血漿adrenalineは有意に増量したが, 血漿noradrenalineは変動しなかった. 術後は血漿adrenaline, noradrenalineは体外循環時間が長くなるにしたがって, adrenalineよりもnoradrenalineの方が増量している期間が長くなり, 術中, 術後の輸血の有無からは, 無輸血群の方が輸血群より増量している期間が長い. これに対して, 対照症例では術後早期の血漿adrenalineの増量はすぐ回復し, 血漿noradrenalineは有意な変化を示さなかった. また, 術後の尿中adrenaline, noradrenaline, dopamine排泄量については, 開心術症例ではadrenaline排泄量, noradrenaline排泄量ともに増量するが, 体外循環時間が長くなるにしたがって, noradrenaline排泄量はadrenalineの排泄量よりも増量している期間が長くなる. 一方, dopaminineの排泄量は逆に減少するが, 体外循環時間が長くなるにしたがって, 減量している期間は長くなる. この変動は無輸血群より輸血群で顕著であった. これに対して対照症例では, adrenaline排泄量, noradrenaline排泄量の増量は術後早期に回復し, dopamineの排泄量の減量も有意ではなかった. このことは体外循環などを含めた開心術侵襲が大きくなればなるほど, 内因性カテコールアミン代謝への影響は大きく, adrenaline, noradrenalineの順に枯渇現象がみられ, この現象が前駆物質であるdopamineにもおよぶものと結論される. |