Abstract : |
現在, フアロー四徴症に対する根治手術は体外循環法, 手術手枝, 術後管理などの進歩発展により, 新生児, 乳幼児に対しても積極的に行われているが, その手術成績は必ずしも良好とは言い難い. 本症に対する姑息的手術は現在でもなお有効な術式であり, とくにBlalock-Taussig手術は安全で症状の寛解と延命効果が期待できる術式である. 今回, 著者らは教室で昭和30年から昭和53年8月末までの過去23年間にフアロー四徴症に対して施行したBlalock-Taussig手術症例221例のうちで, 手術後10年以上を経過した190症例について検討を行い, 以下の結論を得た. 1)フアロー四徴症に対するBlalock-Taussig手術症例221例の死亡例は20例(9.0%)であり, とくに最近の10年間の167例では死亡5例(2.9%)と低下しており, 本症に対する症状の改善とまた長期遠隔成績からも延命効果が得られる安全な術式である. 2)本術式の適応は乳幼時期(6ヵ月以上)で肺動脈および末梢肺動脈の発育不良例, 冠動脈の走行異常を伴う症例が対象となろう. 3)本術式は他の短絡手術に比べ, 短絡量の過大による心不全, 肺高血圧の発生も少なく, 肺血管床, 左心系の発育を促し, 根治手術時に有利に作用するものと考える. 4)本術式の遠隔時の成績を経年別に検討すると, 手術後の5~6年目で一度症状の再発現を認め, その時期に再手術として根治手術(平均5.3年目)ないし姑息的再手術(平均4.4年目)が本術式後の約60%に施行されている. 5)初回のBlalock-Taussig手術のみで10年以上経過した症例は60例(40%)あり, そのうち遠隔時での死亡16例を除いた44例が現在生存が確認され, NYHAの分類から見て, I度とII度の症例は36例(81%)であり, 就業別分類では軽作業に従事する者が多いが, 結婚生活者15例, 経産婦5例おり, 元気な日常生活を送っている. |