アブストラクト(27巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 川崎病冠状動脈病変に対する外科治療
Subtitle :
Authors : 須磨幸蔵, 竹内靖夫, 辻隆之, 城間賢二, 井上健治, 古川哲夫, 小山雄二, 徳地孝一, 成味純, 落雅美, 中島一己, 浅井利夫*, 草川三治*, 菅原基晃**
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学第2病院循環器外科, *東京女子医科大学第2病院小児科, **東京女子医科大学第2病院心研理論外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 11
Page : 1564-1572
Year/Month : 1979 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 川崎病による虚血性心疾患を伴った6歳から9歳にいたる5症例に手術治療を行った. 第1例:前下行枝と右冠状動脈へのACバイパス, 第2例:回旋枝と右冠状動脈へのACバイパス, 第3例:前下行枝へのACバイパス, 第4例:右冠状動脈瘤剔除と右冠状動脈へのACバイパス(右冠状動脈瘤の拡大傾向と瘤内の血栓形成の可能性から剔除を行った), 第5例:左室瘤切除と右冠状動脈へのバイパス手術を行った. バイパスグラフトには自家大伏在静脈を用いたが, 術後1カ月の検査でグラフト開存率は83%であった. 現在, いずれの症例も正常な日常生活を送っている. 川崎病の冠状動脈病変は動脈瘤, 狭窄, 閉塞など多彩な形態的変化を示す. 動脈瘤が血行力学上如何なる役割を演ずるかを調べるためにモデル実験を行った. 動脈瘤1個, 2個直列, 3個直列の場合, オリフィスの面積狭窄度として, それぞれほぼ0.50, 0.55, 0.70に相当する血流抵抗を示すことがわかった. したがって動脈瘤3個以上が直列につながる場合には有意の血流抵抗を示すことになる. 実際には冠状動脈病変は動脈瘤と狭窄が混在するので総合的な判断が必要である. また瘤内の渦発生は血栓形成を促進する. 手術適応は成人の冠状動脈硬化性虚血性心疾患のそれに準ずる. 動脈瘤の処置については瘤の拡大傾向, 血栓形成, 狭窄効果のある場合にはACバイパスに加えて動脈瘤剔除あるいは流出入血管の結紮術が考えられる. 著者らの経験した右冠状動脈瘤剔除は比例的容易に行うことができたが, 左冠状動脈瘤は前下行枝と回旋枝の分岐部に存在することが多く, 瘤剔除にはその後の両血管支配領域の血流が充分確保される保証が必要であり, 実際には困難な場合が多いと思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 川崎病, ACバイパス, 冠状動脈瘤切除, 抵抗係数, オリフィス狭窄度
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