アブストラクト(27巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 人工弁置換後遠隔期合併症-出血について そのI 術後肝炎との関連
Subtitle :
Authors : 坂下勲, 大谷信一, 江口昭治, 鷲尾正彦*
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第2外科, *山形大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 11
Page : 1572-1578
Year/Month : 1979 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術後10%程度に肝炎が発生することが知られ, HBsAg陽性供血者をスクリーニングしてもその頻度に影響のないことが報告されている. 人工弁置換症例の大部分は遠隔期Vit.K拮抗剤である経口抗凝血薬Warfarinを服用し, 術後合併症の血栓塞栓発生を予防しているが, 急性肝炎の併発でWarfarinの効果が増強され, 出血傾向を出現することが考えられる. 昭和53年4月までの人工弁置換耐術症例290例中27例, 9.3%が術後遠隔期に肝炎に罹患し, くも膜下出血, 鼻出血, 血尿など出血性合併症を6例に認め, さらに肝炎に原因した出血死および死亡(主に劇症肝炎)を各々2例に経験した. このうち臨床経過の詳細が明かな16例につき, 肝機能障害の程度と速度およびTTO, 出血性合併症の関係, さらに肝炎罹患時の抗凝血療法のあり方の指標を求めた. 出血傾向は肝機能障害が短期間に高度になる程著明で, GOTが平均4.3日の経過中に1,000単位以上となった4例では全例に認められたのに反し, GOTが平均12.4日に平均454単位にとどまった11例では2例に認めたに過ぎなかった. 肝機能障害からの回復過程では出血よりむしろ適切な抗凝血療法の維持が問題で, 肝炎のため中止または一時減量された抗凝血療法の再開や増量に際し, 肝機能回復速度とT.T.0.の上昇傾向を知ることが重要である. 一般に肝機能回復が遅延すると, 同一程度の機能障害でもT.T.0.の上昇はGOTがより高い値で起こる. 従って抗凝血療法はこの傾向を参考に再開, 増量さるべきと考える. ただ, 遠隔期ではTTOが1~2週間程度100%となっても血栓塞栓発生と直接関係がないので, 余裕をもって対策を講じてもよいと思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 出血傾向, 肝機能障害とTTO, 肝炎時の抗凝血療法
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