アブストラクト(27巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心房中隔欠損作成法-新しい手技の開発と臨床的・病理解剖学的研究-
Subtitle : 特掲
Authors : 上原吉三郎, 和田寿郎
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学第1外科学教室, 日本心臓血圧研究所外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 12
Page : 1675-1690
Year/Month : 1979 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 完全大血管転位症, 三尖弁閉鎖症などの乳幼児の一期的根治手術の成績はいまだに不満足であり, また不可能な場合もある. このような症例では心房中隔欠損(ASD)を作成して, 左右両心房間の短絡血液量を増やして, 動脈血酸素飽和度(SaO2)を上昇させ, 右房や左房の負荷による心不全や肺うっ血を軽減して患児の成長を図る必要がある. 肺血流量の増加があれば, 肺血管閉塞性病変の進行を阻止するために, 肺動脈絞扼術が行われる. この時, SaO2が低下するのを防ぐためにASD作成も行われる. 肺血流量の減少があれば, ASD作成と同時に, 大動脈→肺動脈短絡手術を行うと, 有効肺・体血流量が共に増加するので, 手術は一層効果的となる. Blalock-Hanlon変法(B-H変法)は, 右肺動・静脈を遮断し, 右房と左房に鉗子をかけるので手術侵襲が大きい. Rashkind-Miller法は侵襲は少ないが, 不成功例や効果の持続期間が短いなどの欠点がある. N-C法では, 右開胸または正中切開下に, 右心耳よりBrock型漏斗部切除刀を卵円孔まで挿入して, 下大静脈入口部外縁に向けて, 卵円窩の膜様中隔を切除する. 従って, 血液循環が遮断されず, 術中の血行動態が安定しており, また, 手術効果の持続期間が長い. 正中切開で行えば術中に肺を圧排しないので, 肺高血圧のある例で有利である. 1971年より1977年までにB-H変法で15例, N-C法で15例手術した. B-H変法とN-C法の比較により, 両者の利点と欠点を述べた. また, この30例を肺血流量増加~正常群と減少群に分けて比較して, 手術成績を左右する術前因子を明らかにした. 大血管転位症3例, 総肺静脈還流異常症7例, 三尖弁閉鎖症4例, 純型肺動脈閉鎖6例の剖検例で, その解剖学的・血行動態的特徴を検討して, 手術法の選択や手術時期を決定する上での注意点を述べた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 新しい心房中隔欠損作成法, 肺血流量増加~正常群, 肺血流量減少群, 有効肺血流量, 有効体血流量
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