| Abstract ： |
39頭の雑種成犬を用い, 大動脈一冠静脈bypass（A-V bypass）すなわち逆行性冠潅流における急性虚血心筋における心筋保護効果を, 酵素化学的NBT染色を加味して形態学的に検討した. 前下行枝結紮のみの群と, これにA-V bypassを作成した2群にわけた. バイパス流量は, 30ml／min.を維持し, バイパス血圧は体血圧の80％とした. 12時間まで経時的に犠死させ, 死後ただちに, 新鮮標本でNBT染色性に基づき虚血部面積比を求め, ついで, 心筋間質内出血, うっ血, および炎症細胞浸潤, また心筋の横紋構造の不明瞭化を純形態学的に検討した. NBT染色の示す虚血部は, A-V bypassを行った群において, より面積比は少なかった. これは6時間から8時間の間で, 両群間で有意差を認めた. 横紋構造の温存される点からも, A-V bypassが有効と考えられるが, 一方著明な出血, うっ血をともなっていた. 血行動態的諸指標は, 両群の間で有意差はなかった. この結果から, A-V bypassは, 虚血に対する心筋の温存に対して有効と考えられるが, 逆行性潅流量および圧に関して, さらに形態学的障害もなく, より充分な心筋保護効果を得られるよう検討すべきである. |
