アブストラクト(27巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 小児期人工弁置換術の問題点
Subtitle : 症例
Authors : 今村洋二, 竹内成之, 勝本慶一郎, 加藤木利行, 大蔵幹彦, 井上正
Authors(kana) :
Organization : 慶応義塾大学外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 12
Page : 1756-1763
Year/Month : 1979 / 12
Article : 報告
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 小児期重症弁膜症に対する人工弁置換術の問題点につき, 教室の症例を中心に考察する. 教室では, 昭和53年12月未までに144例の弁置換症例を経験した. うち10歳末満の小児期例は, 左側房室弁置換10例, 大動脈弁置換1例, 右側房室弁置換3例, 二弁置換1例の計15例であり, 全症例の10%となる. 最年少例は1歳2月例であり, 年齢による頻度の差はない. 15例中, 3例が手術死亡, 12例を, 術後7月~7年7ヵ月の期間にわたり経過観察中である. この間, 再弁, 再々弁置換症例を2例経験している. 真に理想的な代用弁が存在しない現在, 小児期の弁疾患々者の治療においても, 可能な限り弁の温存に努めるべきである. しかし, 手術手抜の選択上, 教室では弁形成術よりも弁置換術を選択して来た. これは, 対象患者が重症例に限定され, 確実な弁機能の改善を図らない限り, その救命が困難であると考えたからである. 乳幼児期の抗凝血薬療法には, その維持量決定, 内服持続に困難性があることより, 現在, 教室では, 弁選択にあたり, 弁機能不全発生時の対策まで考慮に入れた慎重な配慮が必要であると考えている. すなわち, 2例の再弁, 再々弁置換症例の経験から, Bjork-Shiley弁のようなtilting disc弁では, 金属支軸に血栓の付着が起こると, 弁の開閉障害が急速に進展する. これに比し, Ball弁, Xenograftでは, 血栓の付着が起こっても, 弁の開閉が完全に障害されるまでに時間的余裕があると考えこれらの弁を選択することが望ましいと考えている. さらに, この時期では, 心筋の障害も比較的少ないので, 安全に再手術が可能と思われるので, 再手術を前堤としてあえて小さい弁を用いても良好な血行動態を維持できると考えている. さらにXenograftは血栓形成が少なく, 心内腔の小さい症例にも適合することなどを考え, 房室弁置換症例には, 現在Xenograftを第1選択としている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 小児期人工弁置換術, 抗凝血薬療法, Xenograft
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