アブストラクト(28巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 後天性三尖弁閉鎖不全症の外科治療に関する臨床的研究―本症の定量的診断法と三尖弁弁輪形成術の術後評価に関する検討―
Subtitle :
Authors : 中埜粛, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 1
Page : 20-34
Year/Month : 1980 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 病期の進行した僧帽弁弁膜症に合併してきた三尖弁閉鎖不全症(TI)について, (1)本症の定量的な診断法を確立し, (2)本診断法を用いて血行動態的検索を行い, 本症に対する三尖弁弁論形成術(TAP)の術後遠隔成績に影響する因子を明らかにせんとした. (1)TI診断法は, 熱希釈法を導入しthermistor probeを三尖弁直上および肺動脈幹内に留置して, 右室内に5%グルコース液10mlを急速注入し熱希釈曲線を記録して, この2つの曲線下の面積比を逆流率(RF)として算出した. (2)僧帽弁弁膜症手術施行例32例のTIの程度は, 術中TI判定結果とよく一致し, 外科治療上その有用性を確認しえた. (3)TI逆流率と血行動態諸量との対比にて, 右房平均圧(RAm)および右室拡張終末期圧はRFと正の相関を認め(前者 r=+0.67, P<0.001;後者 r=+0.60, P<0.01), また心係数とは負の相関を認めた(r=-0.49, P<0.05). (4)TAPの術後平均20ヵ月に血行動態的検索を行った19例中, 適正な僧帽弁手術が行われた群(14例)では肺動脈圧(PAs)の下降と共にRAmは術後安静時有意の下降を認めたが(P<0.001), 僧帽弁病変の再発ないし手術不満足例の群(5例)では, TAP後であっても術前値同様高値のままであった. (5)前者のうち, さらに熱希釈法によりTIの術後残存の有無判定を行い得た11例中, 6例にRF 30%以下の軽度TIの残存を認め, 全例僧帽弁狭窄症に合併したものであった. TI残存群および消失群の血行動態的検討により, PAs, 肺血管床圧較差および肺血管抵抗は, 術後安静時では両群間に有意差はないが, TI残存群では運動負荷によりいずれも再上昇を示し, TI消失群との間に有意差を認めた(p<0.05). (6)以上より, TAPの術後遠隔成績に影響する因子が, (1)僧帽弁病変に対する修復の良否と, (2)僧帽弁病変によってもたらされた肺循環動態の術後における改善の程度とであることが明らかとなった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 三尖弁閉鎖不全症, 熱希釈法, 逆流率, 三尖弁弁輪形成術, 肺血管抵抗
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