アブストラクト(28巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 単純超低体温麻酔時の心室細動発生に関する研究
Subtitle :
Authors : 佐野彰
Authors(kana) :
Organization : 岐阜大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 1
Page : 35-47
Year/Month : 1980 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 単純超低体温麻酔の重大な合併症である心室細動発生の機序を解明するため雑種成犬を用いて実験的研究を行った. エーテル深麻酔(E群), NLA麻酔(N群)および対照としてチオペンタール入眠量使用(C群)の各群に表面冷却を行い, また常温下エーテル深麻酔(E常群)について, とくに心内カテーテル電極を用い, 特別に作成した刺激発生装置により電気生理学的測定を行った. 冷却に伴う調律異常はC群の40%, N群の36%, E群の25%にみられ, 心室細動の発生はN群の1例(9%)のみであった. なお心室性期外収縮はC群の40%, N群の73%, E群の44%にみられた. 電気的心室細動閾値は低温時に上昇し, 復温により回復した. 低温時の閾値上昇はE群でもっとも著明であったが, E常群では閾値の上昇はみられなかった. 拡張期刺激閾値は25℃以下で上昇するものと低下するものがあり, 上昇するものでは心動停止が, 低下するものでは期外収縮の発生が多かった. 有効不応期は冷却にしたがい延長し, 心周期にしめる割合ではC群, N群の30℃, 25℃で著明に大であった. 伝導時間は冷却にしたがい延長するが不応期の延長に比べて少なく, この較差は低温になるにしたがい増大した. E群ではこの較差の増大は軽度であった. E群では著明な代謝性アチドーシスをきたしたが不整脈の発生はもっとも少なく, 電気的細動閾値ももっとも高値を示した. 以上の結果より, 低体温時の心室細動発生機序として, その発端となる異所性自動能の亢進すなわち心筋の局所的な興奮性の異常が推測された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 低体温麻酔, 不整脈, 心室細動閾値, 拡張期刺激閾値
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