アブストラクト(28巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 気管再建に関する実験的研究 生体気管をGraftとした気管再建について
Subtitle :
Authors : 和田源司, 山口豊
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学医学部肺癌研究施設第1臨床研究部門
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 1
Page : 48-59
Year/Month : 1980 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 気管再建術において, 端々吻合の許容範囲以上の切除が必要とされる場合, 何らかの代用気管による部分的置換が要求される. そこで著者は同種および異種(豚)の生体気管を基盤とした諸種のgraft(移植片)を作成し, 雑種成犬40頭へ移植した. 術後は経時的に気管支鏡にて治癒過程を観察, 死後は吻合部, 肺を中心に病理組織学的検索を加えた. 4%ホルマリン, 無水アルコール等に保存したgraftの移植成績は不良で早期に死亡した. 原因として感染あるいは拒絶反応が考えられ, 異種にその傾向が強かった. 次に生体気管の構成成分のうち蛋白質を0.05%パパイン, 0.05%フイシン, ストレプトキナーゼ1万単位/ml+ストレプトドルナーゼ2,500単位/ml等の蛋白分解酵素で処理後シリコンコーテングするといった「蛋白分解酵素処理シリコン加工生体気管のgraftを作成した. 予備検討として豚気管片ホモジネートにて, 酵素処理前後の蛋白質, 多糖類の変動, 免疫応答を検索した.酵素処理気管片の蛋白質含有量は対照の非酵素処理気管片に比して有意に減少し, 多糖類(グルコース, グルコサミン)についても有意の減少を認めた. 免疫学的検索について細胞性免疫をマウスの遅延型皮膚反応で調べた結果, 酵素処理気管片は, 非処理に対し有意な減少を示し, 体液性免疫について受身赤血球凝集反応で調べたが, 免疫グロブリンIgM, IgGの抗体価は対照に比して有意の減少を示した. 酵素処理シリコン加工生体気管の移植実験において同種で最長生存56日, 異種で94日と満足すべき成績ではなかったが, graftとrecipientは吻合状態良好, 組織学的にも粘膜下層でよく癒合している症例が得られた. 現状においては酵素処理シリコン加工気管は気管再建術に臨床応用することは困難であるが, 新しい代用気管として検討していく価値のあるものと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 気管再建, 生体気管, Graft, 蛋白分解酵素処理, シリコンコーテング
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