アブストラクト(28巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 乳幼児開心術前後の肺機能に関する臨床的研究
Subtitle :
Authors : 浜田洋一郎, 新津勝宏
Authors(kana) :
Organization : 岩手医科大学第3外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 1
Page : 75-90
Year/Month : 1980 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 乳幼児開心術の進歩はめざましく, より重症例へと手術適応が拡大され, ますます術後管理が重要となってきた. 著者は呼吸生理学的見地から, 術前後を通じ, A-aDO2, Qs/Qtの変動を追求し, これと肺循環動態との関係を検討するとともに, 術後肺機能不全の成因を知る目的でこの研究を行った. 岩手医大第3外科教室で単純低体温法により開心根治術を施行した先天性心疾患を対象とした. その対象は測定しえた術前20例, 術後28例である. 途中まで測定しえた症例が9例あったが, それは破棄した. それぞれの平均年齢, 平均体重は23カ月, 11kg, 25ヵ月, 10kgであった. 測定はRadiometer社製のA.B.L-1全自動ガス分析器を用い, Comroeの方式に従いA-aDO2, Qs/Qtを算出した. 測定時期は術前, 術当日, 第1日, 第2日, 第3日, 1ヵ月とし, 次の結果を得た. 1)左-右心内短絡疾患では術前よりA-aDO2の増大を認め, 肺内シャントの存在を認めた. 肺循環動態とA-aDO2, Qs/Qtの関係は有意に正の相関を示した. 2)A-aDO2が最も増大するのは術当日~第1日に認められ, 肺高血圧症を伴う心室中隔欠損症では術当日から高値を示すが, きわめて早く回復する. それに対し, 単純な心室中隔欠損症では全経過を通じて低値で, 緩徐な回復傾向を示した. 3)術後急性期でのA-aDO2増大は肺内シャントが主体で, その肺内シャント存在下では心拍出量が多いほど, 肺内シャントが大きいという関係を認めた. 4)肺高血圧症を伴う心室中隔欠損症では術後1カ月には, 肺循環動態, A-aDO2, Qs/Qtは1歳未満例では, 2~3歳例に比較し著明な改善を示した. 肺循環動態はA-aDO2およびQs/Qtと正の相関を得た. したがって, A-aDO2およびQs/Qtは予後評価の指標になりうるものと思われた. 5)Fallot四徴症の変動は特異で, 第1日, 第3日に異常値を示す傾向にあった. 術後1ヵ月, 心内異常の全くない例でも肺内シャントを認めた. 以上, 先天性心疾患でのA-aDO2増大は肺内シャントのためであり, 遮断時間のみならず各疾患群に特有な肺病変の存在が主体であると思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺胞気-動脈血酸素分圧較差, 肺内シャント率, 動脈-混合静脈血酸素含量較差, 肺循環動態
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