アブストラクト(28巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 実験的冠不全に対する選択的心臓神経叢切除の効果について
Subtitle :
Authors : 武政厚男, 鈴木章夫
Authors(kana) :
Organization : 順天堂大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 1
Page : 100-110
Year/Month : 1980 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 目的:異型狭心症の発生機序について心臓自律神経作用による冠状動脈の収縮が注目されている. われわれは実験的に選択的心臓神経叢切除を行い冠血流量および血行力学に及ぼす影響とくに冠状動脈収縮に対する効果を検討した. 方法:開胸雑種成犬25頭を使用し, 体動脈圧, 右房平均圧, 心電図, 電磁流量計(日本光電MF27)による左冠状動脈(LAD, CX)の流量をモニターし, 同時に心拍出量測定を熱希釈法により行い, また心筋酸素消費量測定のため, 冠状静脈洞血を採取した. I群:冠不全作成のため, 冠状動脈収縮物質としてPitressin 1単位/kgを左冠状動脈回旋技基部に塗布した(n=7). II群:選択的心臓神経叢切除として心臓神経叢に含まれ臨床上はWrisberg神経節と呼ばれている部分を中心に両大血管基部周囲, および肺動脈後方より左主幹冠状動脈に至る神経を切除した後, I群と同様操作を行った. 測定方法はI群, およびII群ともにPitressin塗布前および後2, 5, 10, 20分値の変動を経時的に測定して比較検討した. 結果:(1)冠血流量はPitressin塗布後2, 5, 10分値でI群ではおのおの, 平均23%, 12%, 10% の減少を示したのに対し, II群ではおのおの, 平均2%, 9%, 13%の増加を示し有意差を認めた(p<0.05). (2)冠血管抵抗は2分値においてI群では平均46%の増加を示したが, II群では平均12%の増加を示し, 有意差を認めた(p<0.01). (3)心筋酸素消費量はI群では2分値において平均16%の減少を示したがII群では平均14%の増加を示し, 有意差を認めた(p<0.05). また, 心負担係数は心筋酸素消費量と平行を示し2分値においてI群では変化を示さなかったがII群では平均8%の増加を示し, 有意差を認めた(p<0.025). (4)選択的心臓神経叢切除のみを行った実験犬では術前後で冠血流量, 血行力学的に有意差は認めなかった. しかし, 10秒間の左冠状動脈回旋技基部の完全閉鎖後にみられた反応性充血は切除後において抑制された. 結論:選択的心臓神経叢切除法は冠血管収縮による冠血流量減少, 冠血管抵抗増大を抑制し, 冠不全に対する手段として有効である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心臓自律神経, 冠状動脈収縮, 異型狭心症, 冠血流量, 選択的心臓神経叢切除
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