Abstract : |
左冠動脈肺動脈起始症(anomalous origin of left coronary artery arising from pulmonary artery, ALCA)は, Bland-White-Garland syndromeとも呼ばれ, 稀な疾患であるが, その予後の極めて不良な先天性心疾患の1つである. 著者らは, うつ血性心不全を主症状とした, 1歳8ヵ月の男児にみられたALCAに乳頭筋自体の硬塞性変化にて生じた僧帽弁逆流症を合併した症例に, 心筋冷却法の併用のもとに, 大動脈-ALCA直接吻合術および異種生物弁(Hancock弁)による僧帽弁置換術を同時に施行し, 全治せしめえた. 1歳乳児に対する大動脈-ALCA直接吻合術の報告は, Graceらの小児3例につづいての本邦第1例であり, これに同時に僧帽弁置換を行った成功例は内外の文献上初めてと考えられ, 本症の外科治療について若干の考察を加え報告した. とくに本症に対する外科治療に関し, 結紮術, バイパス術に代って新しい術式である大動脈-ALCA直接吻合術が第一選択とされるべきであり, なかんずく, 小児例では, 他の術式にみられない種々の利点があげられることを強調した. また, 本症の重要な合併症である僧帽弁機能障害に対しても, 積極的外科治療を同時に行ったことは, これまでとかく異常動脈の外科的処置のみに終始した本症に対する治療法を一歩進めえたものである. |