アブストラクト(28巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 外傷性肺動静脈瘻―大量喀血で来院し緊急手術により救命しえた1例
Subtitle : 症例
Authors : 高場利博, 河村一敏, 高尾資朗, 舟木正朋, 松田賢, 石井淳一, 鈴木悟*, 諸星利男**
Authors(kana) :
Organization : 昭和大学医学部外科, *昭和大学耳鼻科, **昭和大学第1病理
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 1
Page : 139-144
Year/Month : 1980 / 1
Article : 報告
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 61歳, 男子の外傷性と考えられる肺動静脈瘻の気管支腔内破裂例を経験した. 患者は戦争中にジャングルの中で胸部外傷をうけ, 血痰, 意識障害があって治療をうけており, 戦後胸部X線で肺結核の診断のもとに治療を行った既往を有している. 昭和53年3月自宅において突然の大量喀血をみて緊急入院, 喉頭癌の治療をうけていることから喉頭からの出血が疑われたが, 癌の再発は否定された. 入院後も喀血が続き, 気管切開を施行した. 聴診上左胸部の血管雑音も聴取されたことから肺動静脈瘻破裂を疑い肺動脈造影を行って短絡を確認した. 間歇的に大量喀血がみられていたが緊急手術として肺葉切除を行った. 術中所見として外傷の後遺症を思わせる線維性癒着, 肺内出血部周囲の瘢痕性肥厚が認められた. この手術所見, 既往歴および組織学的検索から外傷に起因したものと判定した. 術後経過は順調で術後25日で退院した. 本邦においても肺動脈造影法の普及により肺動静脈瘻の報告例が増加しているが, それらはすべて先天性と考えられ, 後天性のものはまだ報告されていない.とくに外傷性のものはわれわれが調べえた範囲では欧米で3例が報告されているにすぎず, 肺動静脈瘻を形成するほどの外傷は致命的であるか, 受傷時に何らかの外科的処置が行われることが多いと考えられ, 外傷後数年を経ての本症の発生は極めて発生頻度の少ないものと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 外傷性肺動静脈瘻, 喀血, 肺動脈造影, 緊急手術
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