アブストラクト(28巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後における2, 3-DPGの変動-末梢組織への酸素供給との関連性について-
Subtitle : 原著
Authors : 畑澤幸雄, 中村和夫
Authors(kana) :
Organization : 鳥取大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 2
Page : 175-185
Year/Month : 1980 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 2, 3-DPGは酸塩基平衡, 炭酸ガス分圧, 温度などとともにヘモグロビン酸素解離曲線に影響を与える重要な因子である. 2, 3DPGの増加は生体のhypoxiaに対する一種の代償機構と考えられているが, 開心術症例では体外循環, 輸血あるいは術後の酸素療法など多くの因子が関与するために, この2, 3-DPGは複雑に変動することが予想された. 本研究では体外循環下開心術症例30例(先天性心疾患:22例, 後天性心疾患:8例)を対象として, 2, 3-DPGをはじめ心係数, 酸素含量, 酸素分圧, Hb濃度などを術後72時間まで測定して検討した結果, 以下のごとき成績が得られた. (1)酸素供給量は術後24時間から72時間にかけて著明に減少したが, 逆に2, 3-DPGは増加を示した. この両者の関係は密接でr=-0.5863(p<0.005)の関係が得られた. また2, 3-DPGは動脈血アルカロージスにより増加することが認められた. このような2, 3-DPGの増加は, 酸素供給量の減少に際して, 組織における酸素の放出を容易ならしめ, したがって混合静脈血酸素分圧の低下を軽減せしめることが判明し, 末梢組織に有利に働くものと考えられた. (2)BellinghamのFormulaを用いたP50 in vivoはBE, PHなどよりも2, 3-DPGの影響をより強く受け, 2, 3-DPGの増加に伴い術後次第に上昇した. (3)混合静脈血酸素分圧と2, 3-DPGの関係につき検討した結果, 室内空気吸入時混合静脈血酸素分圧30mmHg未満の異常低値を示した症例では, 酸素供給量の著明な減少が認められ, さらに純酸素吸入にも拘らず混合静脈血酸素分圧が30mmHg未満であったものは, 心係数2.0以下で, かつ2, 3-DPGの著しい低下を伴うことが判明した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 2, 3-DPG, 酸素供給量, 混合静脈血酸素分圧
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