Abstract : |
開心術後の腎機能低下は, 心臓外科領域における重大な合併症である. 開心術の補助手段として低体温法は多大な成果をあげており, 低体温法における循環生理は, 多方面から研究がなされているが, 腎機能への影響に対する研究はまだ十分とはいえない. 本研究では, 単純低体温法による開心術において, 低体温が術中, 術後の腎機能に与える影響を検討し, 単純低体温下開心術例の腎機能の推移を検討した. (1)低体温冷却過程の腎機能は, 麻酔, 血圧の低下により影響をうける. R.B.F, G.F.Rが低下し尿量は著明に減少するが, 尿細管機能は比較的良く維持され, 冷却時の尿量減少は一過性乏尿の所見であった. 冷却時の尿細管機能は冷却過程の末梢循環に左右される. (2)加温過程においては, G.F.R, 尿濃縮力の回復は遅延し, 尿細管機能は冷却時よりも低下する所見であった. 加温時における腎機能は血中catecholamineの影響が大である. 加温中の循環管理は, 腎機能の面からも良好な循環状態を保つように慎重に管理すべきである. (3)低体温術中においてはA.D.H, aldosteroneによる影響はほとんどないものと思われた. (4)術後6時間では腎機能はほぼ正常化したが, 電解質再吸収能の回復は術後1~2日ころであった. (5)単純低体温下開心術における水分・電解質バランスは術後3日では正常化する. |