アブストラクト(28巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後の低心拍出量症候群に対するDobutamineの効果
Subtitle : 原著
Authors : 中野英一, 田中二郎, 安井久喬, 瀬々顕, 松井完治, 竹田泰雄, 徳永皓一, 多司見司*
Authors(kana) :
Organization : 九州大学医学部心臓血管研究施設外科部門, *九州大学医学部付属病院医療情報室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 3
Page : 370-377
Year/Month : 1980 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : カテコールアミン誘導体dobutamineの開心術後低心拍出量症候群(LOS)に対する治療効果について検討を加えた. まず開心術後患者の血行動態におよぼすdobutamineの投与濃度の影響を心拍出量が軽度に低下した8例の患者にて検索した. dobutamine 3μg/kg/minの投与では投与前値より心拍出量は17%増加したが, 体動脈平均圧および心拍数の増加率は5%にとどまり, 選択的陽性変力作用を有するものと思われた. しかしながら, dobutamine投与量を5, 10μg/kg/minと上げていくと, 心拍出量も増加していくが, 心拍数の増加率が著明となり, 10μg/kg/min以上の投与量では著しい頻脈が起こり強い陽性変時作用が出現することがわかった. これらのことより, dobutamineは開心術後患者に対し, 陽性変力作用および陽性変時作用の両者を有するが, これらの作用発現は濃度依存性であり, LOS治療に有利な選択的陽性変力作用を発現する至適濃度が存在することが推測された. 次にdobutamineを開心術後LOSに陥った患者に投与し, その治療用量と効果について検討した. 11例中8例に本剤の有効性が認められ, その単独投与によりLOSより救命しえた. これら有効例における最大投与量は5~20μg/kg/minであり, この濃度範囲では投与前値と比べて収縮期体動脈圧34%, 拡張期体動脈圧21%, 脈圧60%の増加が得られ, 平均左房圧も29%の低下を示したが, 心拍数の有意な変化は認められなかった. 一方, 11例中3例は20μg/kg/min以上の投与にもかかわらず本剤に対し反応不良で血行動態の改善は得られなかった. 以上の結果より, dobutamineに対する反応性はLOSの重症度に従って低下するが, 多くのLOS症例で5~20μg/kg/minの投与量で有意な心拍数増加なしに血行動態を改善することが可能で, この濃度範囲では陽性変力作用が主体をなすものと考えられ, 催不整脈作用も認められないことより, 開心術後LOS治療薬のfirst choiceとして有用であると思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : カテコールアミン, dobutamine, dobutamine投与量, 開心術, 低心拍出量症候群
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