Abstract : |
カテーテル先端電磁流速計によって連続的に測定した下行大動脈の血流速度波形から開心術後の循環動態を評価することを目的として, 雑種成犬を用いて脱血, 輸血を繰返して循環血液量を変動させ, 下行大動脈血流速度と循環諸量の関係について検討を行った. 37℃血液中でカテーテルを上下運動させることによって行ったカテーテル先端電磁流速計の較正で, 血流速度と出力電圧の間に良い相関が得られることを確認した. 上行大動脈と下行大動脈の最大血流速度および血流量の間には良い相関が認められた. 下行大動脈最大血流速度と心拍出量, 下行大動脈最大血流速度と左心室仕事量の間にも良い相関が認められた. 実験結果から下行大動脈の血流速度を測定することによって, 術中術後の心機能をある程度評価できると考え, 術後48時間迄の使用3例を含め20例の症例に, このカテーテルを使用し下行大動脈の血流速度を測定した. カテーテル使用に伴う合併症はみられなかった. 手術終了時の下行大動脈最大血流速度は弁置換5症例では平均69.8cm/secで術前値の16%増, OMC, 先天性心疾患5症例では平均118.7cm/secで術前値の30%増であった. 左心室充満圧と下行大動脈最大血流速度を同時に記録した症例では, 両者から左心室のポンプ機能を知ることができた. 以上より, カテーテル先端電磁流速計を用いた下行大動脈の血流速度測定は, 開心術後の血行動態の評価に有力な方法であると考える. |