Abstract : |
雑種成犬48頭(体重20~38kg)を用い, sodium pentobarbital静脈麻酔下に両側開胸とし, 人工心肺に接続し, 以下の6種の心筋保護法に対する比較検討を行った. I群:対照群, II群:虚血群, III群:間歇的冠潅流群, IV群:局所冷却群(Topical cooling), V群:ステロイドホルモン非使用逆行性冠潅流群(RCSP without hydrocortisone), VI群:ステロイドホルモン使用冠潅流群(RCSP with hydrocortisone). 心筋保護実験中の大動脈遮断時間は60分間とし, その間直腸温を30℃に維持した. 逆行性冠潅流法は, 右房を切開し, Foleyカテーテルを冠静脈洞に挿入した後, balloonをふくらませて固定した. 次に体外循環回路よりinfusion bottleに血液を導き, 約60cmの高さより落差冠潅流を行った. 逆行性冠潅流液はBrown-Harrison型熱交換器に氷水を通して冷却した. VI群では, 冠潅流後半にhydrocortisone 20mg/kgおよびリドカイン1mg/kgをinfusion bottle内に注入した. 以上の方法により次の結論が得られた. 1. 心筋保護法(II-IV群)のうち最も良好な心筋代謝および血行動態を示したものはVI群であった. 次にIII, IV, V群の3群が続き, 最も劣っていたのは, 当然のことながらII群の虚血群であった. 2. 送行性冠潅流法は冷却希釈血液を潅流液とすることにより心筋を速やかに, かつ均等に冷却することができ優れた心筋保護効果が得られる. 3. 逆行性冠潅流液中にhydrocrtisoneおよびリドカインを使用した方が, 心蘇生に関して容易である. 4. 逆行性冠潅流法は十分に臨床応用可能である. とくに大動脈切開を必要とする手術では, 術野を狭くしたり, 操作の煩雑さがないために最適な心筋保護法と思われる. |