Abstract : |
著者らは実験的に右房右室間に弁なし人工血管を用いバイパスを設置して, 血行動態的に三尖弁閉鎖不全状態を作成した. 三尖弁閉鎖不全の逆流量はバイパス血流量として測定され, また, その心臓に及ぼす影響はバイパスの開閉による血行動態の変動から検討された. 本法によれば逆流量と血行動態の関連が如実に示される. 一般に三尖弁閉鎖不全は軽視されているが, 著者らはFallot四徴症根治手術後に問題となりうる肺動脈弁閉鎖不全を伴う三尖弁閉鎖不全について, 本法を応用し, 実験的に検討した. 一方, 右房右室バイパスは臨床的には三尖弁閉鎖症に対する機能的根治手術の一術式として応用されている. このバイパスの開存性を実験的に検討したが, 臨床応用に際しての問題点を示唆する成績を得た. すなわち, バイパスの開存性については中等度以上の狭窄は右房側吻合部に20%, 右室吻合部に40%, 人工血管に6.7%発生した. 吻合部狭窄は右室側に発生しやすいが右房側にも発生するので吻合口の大きさや吻合手技に留意すべきことが指摘された. また中等度以上の狭窄は内径14mm以下の人工血管移植では71.4%, 内径15mm以上の場合では25%であった. 使用する人工血管は内径15mm以上の蛇腹加工平織の硬めのものが望ましいことを認めた. 肺動脈弁を破壊し, 右房右室バイパスを設置して得た肺動脈弁閉鎖不全を伴う三尖弁閉鎖不全の遠隔期血行動態についてみると, 肺動脈弁閉鎖不全単独の逆流率は平均0.397で両者合併の逆流率は平均0.654であった. 右室拍出量は平均206.67cc/kg/分と増加し, 左室拍出量は平均70.98cc/kg/分と減少し, これを反映して右房圧は逆流波形を呈し, 大動脈圧は明らかに下降した. 逆流による著明な右室の容量負荷に相応して右室は拡張肥大を示した. 以上の成績やイソプロテレノール負荷の成績から心予備力の低下を認めるが, 血行動態的に十分代償されうることが推測された. |