アブストラクト(28巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Dibutyryl cyclic AMPの体外循環下開心術後における糖脂質代謝と血行動態におよぼす影響について
Subtitle : 原著
Authors : 佐藤清春, 堀内藤吾
Authors(kana) :
Organization : 東北大学医学部胸部外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 3
Page : 425-437
Year/Month : 1980 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環下開心術後の外科的糖尿病状態を改善させる目的で, インスリン分泌作用を有するDibutyryl cyclic AMP (DBcAMP)の臨床応用を試みた. 本剤のヒトの代謝におよぼす効果についての報告は少なく, 血行動態への効果の報告はない. そこで研究(I)では, 8例で心臓カテーテル検査時0.2mg/kg/分のDBcAMPを20分間投与し血行動態への効果を検討した. 研究(II)では, 20例の先天性心疾患を2群にわけ, 10例を対照(C)群, 他の10例にDBcAMPを投与して(D)群とした. DBcAMPの投与法は体外循環終了1時間から0.2mg/kg/分を60分間投与した. 両群で血中カテコールアミン, 糖脂質代謝, 酸塩基平衡, 血行動態, 尿量を比較検討した. 結果:(1)血行動態に与える効果;研究(I)では全末梢血管抵抗の減少(35%)と心係数の増加(35%)が認められ, 心拍数の増加(13%)と左室max dp/dtの増加(9%)は軽徴であった. 研究(II)でも同様の効果が認められたが, その程度は軽度であった. (2)糖脂質代謝と酸塩基平衡に与える効果;体外循環開始30分と終了後1時間では血中カテコールアミンは著明に上昇し, 以後漸次低下した. そのパターンには両群間に差がなかった. C群では体外循環後高血糖, 低インスリン, 高遊離脂肪酸, 代謝性アシドーシスが持続した. しかるにD群では本剤投与により血糖値はさらに上昇したが, インスリンが著明に増加し, インスリン/血糖比は著明に上昇し, 遊離脂肪酸は低下した. 代謝性アシドーシスも改善された. 結論:DBcAMPは軽度の末梢血管拡張, 心拍数増加, 心拍出量増加の作用を有する. カテコールアミンが高く, インスリン分泌の低下した体外循環下開心術後に使用すると, 血糖値を高め, インスリン分泌を増加させ, インスリン/血糖比を上昇させ, 遊離脂肪酸を低下させるなど, エネルギー代謝を円滑にし, 代謝性アシドーシスを改善させる作用を有するので有益であると結論された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : DBcAMP, 体外循環, 糖脂質代謝, インスリン, 末梢血管拡張
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