アブストラクト(28巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心房の興奮伝導に関する研究-心房興奮伝播図による基礎的ならびに臨床的研究-
Subtitle : 原著
Authors : 村北和広, 岩喬
Authors(kana) :
Organization : 金沢大学医学部第1外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 3
Page : 446-461
Year/Month : 1980 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 雑種成犬28頭および臨床例14例に対し心房mappingを行い心房興奮伝播図を作成, 結節間特殊伝導路の存在および心房内における興奮伝播様式の検討を行った. さらに, これらの刺激伝導路と心手術時の右心房切開法, 心房中隔欠損孔閉鎖手技との関係, また, 複雑心奇形における心房内修復手技についても検討した. 心房興奮伝播図では, 他部位より早く伝導を伝える2方向の波が認められ, Jamesの唱えるanterior, posterior tractに一致したが, middle tractは認められなかった. 人工心肺を用いて行った伝導路切断実験ではanterior tractがposterior tractより約20msec.早く興奮を房室結節へ伝えることがわかった. また, 両伝導路の切断により10例中2例がjunctional rhythmとなった. 基礎実験より右心房斜切開法を新しく考案し, 臨床においてもASD 8例に用いた. 術後不整脈は心房縦切開を用いた場合の52.1%から37.5%に改善を示した. ASD症例では心房全体にわたって興奮伝播の遅延がみられ, 右房圧上昇と相関が認められた. また, 興奮伝播の遅延は心房内伝導時間のみで房室伝導系の遅延は認めなかった. 1次孔ASDとTGAの手術症例では, 術後anterior tractの損傷が, 部分肺静脈環流異常を伴うASDではposterior tractが損傷された. 心房内伝導路の損傷は, 心電図ではほとんど変化がみられない場合でも, 興奮伝播図により損傷部の末梢では著明な興奮の遅れと興奮伝播の乱れがみられる. 心房手術後不整脈予防, 生理的な心房興奮伝播様式を維持する為に, できうるかぎり伝導路の損傷は避けるべきで, とくに少なくとも1本の伝導路は残すべきである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心房興奮伝播図, 結節間特殊伝導路, 右房斜切開法, 心房中隔欠損症, 大血管転移症
このページの一番上へ