アブストラクト(28巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 表面冷却超低体温および潅流加温法における乳幼児開心術後の腎機能-とくに軽度低体温体外循環法との比較-
Subtitle : 原著
Authors : 李雅弘, 石井淳一
Authors(kana) :
Organization : 昭和大学医学部外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 6
Page : 893-910
Year/Month : 1980 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 表面冷却超低体温および潅流加温法と軽度低体温体外循環法により開心術を施行した159例の術前後の腎機能の推移について, 経時的に比較検討し次の結果を得た. 1. 尿量は超低体温群では冷却より開心にいたるまで平均2.1ml/kg/h, 潅流加温中は1.5ml/kg/hであったが, 無尿例が冷却中12例, 潅流加温中22例にみられた. しかし潅流加温後には無尿例はなく, とくに潅流加温後30分では7.6ml/kg/hの尿量を得た. 体外循環群では潅流中1.4~4.7ml/kg/h, 潅流後30分は4.6~20.4ml/kgの尿量を得た. その後漸減し第2病日より漸増するが, 超低体温群でもとくに他の群と差がみられなかった. 2. 術直後の多尿期に尿中尿素濃度と尿中K排泄は最低値を示すとともに, 尿滲透圧も最低となった. 超低体温群では第3病日まで450mOsm/kg・H2O以下の低滲透圧に経過するが, 体外循環群では術後8~12時間にピークを示した. 3. CH2Oは超低体温群では冷却開始より術後にいたるまで-0.2~0ml/minに収斂しつつ経過し, 体外循環群では潅流後60~90分に-0.3~0ml/minに収斂した. 4. 尿中尿素濃度と尿滲透圧は正の相関関係を示した. このことから腎機能の推移は, 尿量とともに尿滲透圧の測定のみで知りうると考えられた. 5. 電解質は4群とも血清および尿中Na濃度に変動は少ないが, なかでも超低体温群では尿中Na濃度が術後8時間より減少傾向にあり出納バランスに注意を要する. 冷却中の血清Kの減少はKイオンが他の細胞に移行していると考えられた. 6. 冷却中の36例中6例に上室性期外収縮を認めた. 不整脈は冷却が進むにつれ, 心拍出量低下と冠血流量減少により心筋のhypoxiaやペースメーカーのcold effectの直接作用によりirritabilityが亢進するため発生したとも考えられるが, KCI投与が有効であり, カリウム不足との因果関係があると解釈された. 7. 超低体温法における腎の形態学的変化を検索する目的で行った動物実験では, 循環停止60分では尿細管腔の狭小化や軽度の糸球体の萎縮がみられたが, 復温後にはそれらの変化は対照腎とほぼ同程度に回復しており, 可逆性の変化であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 表面冷却超低体温, 尿滲透圧, 尿中尿素濃度, 自由水クリアランス, 電解質
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