Abstract : |
実験的に心筋梗塞を作成したときの急性期asynergyをもった左室に対するIABPの効果を血行動態および心機能の面から評価するとともに, その限界についても検討を行った. 雑種犬19頭に, 左室表面の25~45%のasynergyを作成したあと, 30分間のIABPを行った. IABP直前, 施行中, 施行後において各種血行動態パラメーターを計測, 同時に左室シネアンジオグラムを撮影し, 左室容積の算出と左室収縮様式を観察した. 研究成績(各種指標はその平均値)は, 大動脈収縮期圧はIABP前96mmHg, IABPにより90mmHg, IABP停止後98mmHgであった(p<0.01). IABP前と停止後の血圧変動ではasynergyが40%以下の群ではIABP前99mmHgから106mmHgへと上昇(p<0.05)したのに対し, 40%以上の群では74mmHgより68mmHgへと低下(p<0.1)する傾向をみた. CVPは9.1cmH2Oより8.4cmH2Oへ, max dp/dtは1,603mmHg/secより1,334mmHg/secへ, EFは0.37より0.46へ, LVEDPは13mmHgより9mmHgへ, 拡張末期complianceは1.316ml/M2/mmHgより1.860ml/M2/mmHgへ, MSERは130.9ml/secより146.7ml/secへと変動した(いずれもp<0.01). またwall stresは128.1g/cm2から114.7g/cm2に減少するとともに左室収縮様式の改善をみた. 以上の成績は, IABPが血行動態, 左室収縮能および拡張能, 右室機能, 左室仕事効率, 収縮様式を著明に改善するものであることを示している. これらの血行動態, 心機能の著しい改善はIABP直後より得られたことと, 本研究ではasynergy部への冠動脈をすべて結紮してあることから急性期asynergyに対するIABPの効果はsystolic unloadingによる効果が主であると考えられる. またasynergy面積が左室表面の40%を越すとIABPの効果は期待できない. |