アブストラクト(28巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 病理解剖心からみた完全大血管転換症の手術術式と適応とに関する検討
Subtitle : 原著
Authors : 鬼頭修平, 阿部稔雄, 土岡弘通, 弥政洋太郎, 岸本英正*, 加藤敏行**, 吉野正拡**, 南川紀***, 高橋虎男****
Authors(kana) :
Organization : 名古屋大学医学部第1外科, *名古屋市立大学医学部第2病理, **名古屋市立大学医学部小児科, ***名城病院外科, ****中京病院外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 6
Page : 933-945
Year/Month : 1980 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 完全大血管転換症に対する根治的手術術式は血流を変換する位置により, 心房内, 心室内, 大血管レベルの3つにわかれる. 大血管レベルで変換する術式は生理学的解剖学的に理想の手術と考えられ, 諸家によって考案施行されているが, その手術成績は満足できるものではない. 病理解剖心20例を資料として, 次の4点について検査し, それぞれの術式の可能性と適応とについて検討した. 1)冠状動脈の移動の可能性, 2)大動脈と肺動脈との変換の可能性, 3)Conduit procedureの可能性, 4)左室形成不全の有無. 冠状動脈を移動できる例は全例の30%にすぎなかった. 大血管を直接に変換することは, 大血管の屈曲, 狭窄, 左冠状動脈への圧迫を避けられず, 肺動脈の再建には人工血管の使用を躊躇すべきではないと考えられた. Conduit procedureが困難あるいは不可能と考えられたのは8例(40%)であり, 原因として冠状動脈の走行異常と肺動脈径の小さいことがあげられた. Conduitを肺動脈に吻合する際, 肺動脈分岐部をこえて両側肺動脈に切り込み吻合口を大きくすること, tapered conduitを使用することなどの工夫が必要とされた. 左室形成不全を疑われた例はI群のなかで3例あり, 体血圧に耐えることのできない例と考えられた. このように大血管レベルで血流を変換する術式は複雑で, 高度な手術手技を要求されると同時に, 解剖学的制約が多く適応が限られる. 冠状動脈を移動させるJatene法可能な例は全例の20%にすぎなかった. 冠状動脈を移動させないDamus-Kaye-Stansel法は, 手技が比較的簡単で解剖学的制約も少ないと思われ, 45%に可能と考えられたが, 弁付きconduitを使用することに欠点がある. Aubert法は手技がより複雑であるが, 冠状動脈を移動させないこと, 弁付きconduitを使用しないことに長所があり, 今後試みられるべき術式であると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 完全大血管転換症, Jatene手術, Damus-Kaye-Stansel手術, Aubert手術
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