アブストラクト(28巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : カリウム加・冷却稀釈体外循環血による心筋庇護-簡便な方法の提唱とその臨床的な評価-
Subtitle : 原著
Authors : 平明, 屋良勲, 浜田義臣, 豊平均, 山下正文, 大園博文, 湯田敏行, 宮崎俊明, 下川新二, 有川和宏, 秋田八年
Authors(kana) :
Organization : 鹿児島大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 6
Page : 946-951
Year/Month : 1980 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : カリウムと低温とを併用しての心停止, 心筋庇護が優れた成績を示すことは広く認められているが, cardioplegic solutionとしてのカリウム濃度, 添加物, 浸透圧等, いまだ意見の一致をみていない部分も多い. 本法での要諦はカリウムによる急速な心停止と, それに伴う心筋のelectromechanical activityの保存, および同時に用いられる低温による代謝の抑制にあると考えられる. したがって臨床ではこれらの点のみを十分に満足させて本法を簡便に用いることが望ましい. われわれは体外循環での稀釈充填血にカリウムを加えその濃度を約40mEq/lとし(20ml, 40mEqのKCl溶液1.0mlと稀釈血で50mlとする)冷却して大動脈遮断下にその起始部に用手注入し良好な成績を得た. 装置は極めて単純で体外循環動脈lineから分岐させた市販の輸血用加温coilを氷水中に浸し, 逆に冷却に用いた. 注入は用手的に行い心電図のstand stillを示標とした. 心電図にelectromechanical activity回復の兆しが見えたら直ちにreplenishmentを行い, やはり心電図のstand stillを目標とした. 注入量は初回255ml±95ml(SD), 2回目以降は約150mlであった. 初回のstand stillは注入開始後約60秒で得られた. 注入圧は大動脈起始部で通常100mmHgをこえなかった. replenishmentまでの間隔は27.3分±4.8分であった. 心筋温は多くは16℃~17℃に保たれ, この温度での代謝を考えると"cardioplegic agentを血液が運搬する"ということに意義があると考えられた. ヘマトクリット値は30%以下なので低温でのviscosityにも問題はないと考える. 先天性, 後天性心疾患, 弓部大動脈瘤の1例に用いて極めて優秀な成績で心機能の回復もよく, 低心拍出での死亡はなかった. 術当日に他の関与因子を除外し得た11例での心係数は3.6l/min/m2であった. 本法はpotassium-induced multidose cold blood cardioplegiaとも呼ぶべきで最も簡便な形での臨床使用であり, 成績は優れていて推奨に値すると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋庇護, カリウム, 冷却体外循環血
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