アブストラクト(28巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 慢性無気肺および再膨脹肺の換気・肺循環動態についての実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 三木啓司, 井上権治
Authors(kana) :
Organization : 徳島大学医学部外科学第2講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 6
Page : 959-971
Year/Month : 1980 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 慢性無気肺およびその再膨脹後の換気・肺循環動態について, 雑種成犬を使った実験的研究を行い, 次のような結論を得た. 1. 無気肺作成法 金属プレートbandingにより左主気管支を圧平し, 完全な無気肺が作られた. 気管支の穿孔もなく, 再膨脹は容易であった. 2. 慢性無気肺時の所見 無気肺の大きさは1週間で1/2, 3カ月で1/4となつた. 無気肺の血流量の減少は長期になるほど著明で, 3カ月後には1/4に減少していた. 肺血管抵抗の上昇, 気道内圧の上昇もみとめた. PaO2は著明な低下を示すも期間とともに上昇した. しかし3カ月後にもなおかなりの低値を示していた. AaDO2, シャント率は著明に増加したが, 期間とともに減少, 3カ月後にはなお高値を示していた. これらは無気肺の血流減少に対応する変化と考えられる. 3. 慢性無気肺再膨張直後の変化 a)再膨脹直後の所見としては, いずれの無気肺群も, 無気肺時の変化に比べてあまり改善せず, 肺胞の膨脹はなく, ほとんど換気の行われていない状態であった. b)再膨脹1カ月後の所見としては, 2週までの短期無気肺群では前記所見は著明に改善し, ほぼ無気肺作成前値へもどっていた. しかし, 3カ月無気肺群では肺血流量の減少, 肺血管抵抗の上昇は残存し, 気道内圧の上昇, 静肺コンプライアンスの低下もみとめられた. またPaO2は上昇していたが, 左肺静脈血のPO2はなお著明な低下を示していた. シャント率も同様で低下を示したが, 左肺シャント率はなお高値を示していた. これらは再膨脹肺の機能障害の残存を示している. さらに組織学的所見をみると, 短期無気肺群では, 肺胞の膨脹は良好であったが, 長期無気肺群では, 肺胞の膨脹はほとんどなく, 呼吸~終末細気管支の異常拡張がみられ, これにより含気性が保たれていた. 4. 慢性無気肺を再膨脹させても, 無気肺期間3カ月前後を境として正常肺への復元性が低下することが認められた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 慢性無気肺, 再膨脹肺, シャント率, 静肺コンプライアンス, 肺胞無気肺
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