アブストラクト(28巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 重症(乳児期)純型肺動脈狭窄症の術後血行動態と外科的問題点:長期遠隔期(術後2年~11年)にわたる三尖弁閉鎖不全併発例の観察
Subtitle : 原著
Authors : 原田昌範, 今井康晴, 和田寿郎, 中沢誠*, 高尾篤良*
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学心研外科, *東京女子医科大学小児科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 6
Page : 972-977
Year/Month : 1980 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1歳未満に発症した心室中隔欠損のない重症弁性肺動脈狭窄症(純型肺動脈狭窄症)の術後長期遠隔期の詳細な病態報告は少ない. 先に発表したように本症を動脈管開存(PDA)のあるI群とPDAのないII群に大別し, さらに三尖弁閉鎖不全(TI)を加味した分類で術前の右心機能を評価しその外科治療法を検討した. 今回, これら1歳未満に手術を行った22例のうちで術後長期遠隔期(術後2~11年)の検討可能な9例に対して心臓カテーテル検査およびbiplane cine angiogramを行い術後の右心機能より血行動態と外科的問題点を検討したので報告する. 術前PDA依存性の高い群においてはそのPDAは全例で閉鎖していて, その右室容積との関係より手術術式を大きく左右する要因となっている. 右室収縮期圧は著しく低下し右室肺動脈収縮期圧較差はほとんどみとめられなかった. しかも, 右室容積は1例を除く他は術前の大小にかかわらずすべて正常予測値に復していて, 左室機能にも問題がなかった. また, 術前の肺動脈弁閉鎖不全の発症は5例にみられたが右室負荷を与える程の有意なものではなかった. このことは, 成長にともなう良好な右室の発育と正常化が右室駆出抵抗の外科的解除により得られ, 長期遠隔期における血行動態の上で極めて効果的であったことを示すものである. しかしながら, 2例の右室のEjection Fractionの低下や右室拡張末期圧の2例を除く全症例の上昇は右心系のlow complianceを思わせ, 胎生期又は乳児期にあったと考えられる心筋障害が未だ改善されていないことを物語るものである. 右室駆出抵抗の軽減又は消失した術後のTI残存例が3例あり, この残存TIは右室よりの前方駆出量の阻害因子であるため, 何らかの弁自体の器質的変化のある場合は外科的検討が行われねばならない. また, 安静時及び運動時にチアノーゼが認めた例は, 右室拡張末期圧および右房平均圧の上昇による心房間右左短絡が起こっていることを示すもので, 将来場合によってはparadoxical embolismが起こり得るし, 心房負荷による調律不全が憂慮される. 以上より本症の術後では右室収縮期圧の下降のみにとらわれないで, 十二分の術後長期管理と場合によっては心房間交通口の閉鎖や三尖弁自体への何らかの手段を考慮せねばならないと思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 術後PDAの閉鎖, 右室容積の正常化, low compliance, 心房間交通口, 三尖弁閉鎖不全
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