Abstract : |
開心術後にみられる不整脈の原因の1つとして, 低カリウム血症が重要視され, カリウム投与が, しばしば奏効することもよく知られているが, 指標としては血清カリウム値が使用されてきた. しかし開心術後に不整脈を発生した症例と, 発生しなかった症例の血清カリウム値を対比したところ, 両者の間に有意の差を見出すこみができなかった. 不整脈を発生した症例がすべてカリウム不足によるものでなかったにしても, カリウム投与はしばしば効を奏した. そこで血清カリウム値を指標として, 体外循環後のカリウムの出納を推測することは当を得ていないという考えから, 赤血球内カリウム値をとり挙げて, 不整脈との関連性を検討してみたところ, 赤血球内カリウム値の低下とともに不整脈が出現し, 上昇とともに消失した症例をたびたび経験した. そこで, 赤血球内カリウム値が心筋内カリウム値を代表しているか否かをしらべるために, 開心術中に採取した心筋のカリウム値を測定し, 同時に測定した赤血球内カリウム値と比較してみたみころ, カリウムが不足していると考えられる状態では両者はよく相関し赤血球内カリウム値から心筋内カリウム値を推測しうることが明らかとなった. なお, カリウム投与方法の1つとして, Glucose-Insulin-Potassium投与を施行し, 重篤な不整脈が消失する事実を観察した. この際, 赤血球内カリウム値の増加度は, カリウム単独投与に比べて, GIK投与群は2倍であった. 心筋内カリウム値の低下は心不全の程度を反映しているものと推測されたが, ヂギタリス長期投与との間には相関がみられなかった. 以上の結果から, 特に開心術後の体内カリウム平衡の状態を知るための指標として, 赤血球内カリウム値を用いることは, 臨床的意義が大きいと推測された. |