アブストラクト(28巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 人工心肺充填血液の再利用に関する研究-とくにHaemonetics Cell Saverによる検討-
Subtitle : 原著
Authors : 萩原秀男, 瀬在幸安
Authors(kana) :
Organization : 日本大学医学部第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 7
Page : 1047-1060
Year/Month : 1980 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 近年, 心臓外科の著しい進歩に伴い, 人工心肺に使用する血液や輸血用血液を確保する事は困難な状況となる可能性があり, 同種血輸血による副作用も問題となってきている. そこで, 著者は従来廃棄していた人工心肺内残留液を再利用し血液節約の目的で, 人工心肺用血球濃縮装置であるCell Saverを使用し, 人工心肺内残留液を処理し作成した濃縮血に対し基礎的および臨床的研究を行った. すなわち, 濃縮血を有洗群と無洗群に分け, 血液生化学的検索を行い, 臨床的には, これら基礎データをもとに再輸血した. 症例は成人開心術症例32例を対象とした. Cell Saverの血流ポンプ速度は200ml/分で行い, 両群とも平均Ht70%であった. 血小板数, フィブリノーゲン量, 総蛋白量は無洗群に多く残存し, 電解質では, Caが無洗群に多く残存する他は有意の差は認めなかった. 血液凝固能検査では, 部分トロンボプラスチン時間(以下PTTと略す)は両群とも全例300秒以上であり, 血漿プロトロンビン時間(以下PTと略す)は有洗群で全例300秒以上, 無洗群では10例中, 6例が300秒以上であったが, 4例は50~100秒であった. さらに, 無洗濃縮血10mlに5%ブドウ糖液6mlを加え, 硫酸プロタミン0.25mg追加した群では, PT平均21.03秒, PTT153~300秒以上であったが, 5%ブドウ糖液の代りに新鮮凍結血漿6mlを使用した群では, PT平均14.05秒, PTT平均123.32秒と, 生血に匹敵するほど凝固能が改善した. 臨床的に再輸血したもので, 濃縮血を5%ブドウ糖で稀釈した2群では, 濃縮血輸血後, 術後出血の増加および遷延化傾向が認められたが, 硫酸プロタミン追加と濃縮血小板輸血を併用した群では, 出血量と生血輸血量の著しい減少が認められ, 術後, 全輸血量のうち, 濃縮血輸血の占める割合は90%で, ほとんど濃縮血輸血だけで十分となり, 著明な血液節約が可能であった. 以上のごとく, Cell Saverで人工心肺内残留液を処理し, 硫酸プロタミンの追加と濃縮血小板輸血の併用により安全に濃縮血を輸血する事ができ, 血液節約および同種血輸血に伴う副作用の防止の意味からも意義のあるものと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 人工心肺用血球濃縮装置(Cell Saver), 同種血輸血, 血清肝炎, 無洗群濃縮血, 有洗群濃縮血
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