アブストラクト(28巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心筋庇護効果の臨床的検討-Young氏心停止液とGIK冠灌流冷却法の併用効果について-
Subtitle : 原著
Authors : 和田寿郎, 夏秋正文, 加藤盛人, 樗木等, 中江世明, 長柄英男, 北村信夫, 橋本明政
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学外科学第一講座, 心研外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 7
Page : 1099-1107
Year/Month : 1980 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Cardioplegic solutionを用いた冠潅流心筋冷却法は, 良好な無血静止視野と心筋弛緩が得られ手術手技を容易にし, またすぐれた心筋庇護効果のため手術成績の向上をもたらしている. しかし理想的な潅流液が何であるかいまだ明らかでない. そこでわれわれの研究所では, 各種潅流液の優劣について実験的検討を加え, Young氏心停止液とGIK液による冠潅流冷却がもっとも良好な心筋庇護効果を有することを報告してきた. この実験成績に基づき, 1977年4月よりcardioplegiaを臨床面に採用してきたので, 1978年1月までに大動脈遮断が60分を越えた50例について, 臨床成績の面から検討を加えた. 各症例ともYoung氏液による心停止後, 冷却潅流液を約1mの落差で潅流した. 潅流液としてRingerlactate(4例), 50%稀釈血(6例), GIK(I)液(18例), GIK(II)液(22例)の4種の液を用いた. GIK(I)液の組成は, 10%glucose500ccの中に, regular insulin10単位, KCl10mEqを含み, 浸透圧は615mOsm/L, pHは6.0である. GIK(II)液は(I)液を改良したもので, その組成は5%glucose500ccの中にregular insulin10単位, KCl10mEq, 7%NaHCO3 5ccを含み, 浸透圧は334mOsm/L, pHは8.34に調整してある. 臨床例50例のうち, GIK(I)液を使用した1例に下壁硬塞を合併したほかは重篤な合併症はなく, 術後30日以内の急性期死亡もなかった. とくにGIK(II)液の22例の成績では, 48時間以上のcatecholamineの補助例は3例, キシロカイン持続点滴例は1例と他の3液に比べて少なく, 良好な術後経過を示した. 血清酵素学的検査でもGIK(II)液ではほぼ満足すべき結果であったが, 冠動脈疾患では上昇する例もあった. Young氏液とGIK(II)液を併用した冠潅流冷却法は, 速やかな心停止効果と均一な冷却効果が得られ, 冷却中にもなお営まれる代謝面にエネルギー供給を与え, 細胞内外の電解質のバランスを適正に保ち, 阻血中における心筋細胞の庇護に有効であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Younk氏液, GIK液, cardioplegia
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