アブストラクト(28巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心室性不整脈の外科治療に関する実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 佐藤博文, 岩喬
Authors(kana) :
Organization : 金沢大学医学部第1外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 7
Page : 1123-1136
Year/Month : 1980 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 虚血性心疾患や原発性心筋症に基因する薬剤抵抗性の心室性不整脈症例がしだいに増加しつつある. これら難治性不整脈の外科的根治治療の確立を目指して実験的研究を行った. 実験的不整脈を作成し, 心表面マッピング法を応用して不整脈の発生機序を解明し, 心室切開術, 心筋楔状切除術の手術方法とその結果を検討した. イヌ冠動脈前下行枝および回旋枝からの分枝の結紮により心筋虚血を作成し, 45頭中21頭に結紮後5~9時間内に心室頻拍, 心室性期外収縮の頻発を得た. 21頭中12頭は一源性不整脈であり, 9頭では多源性であった. 心表面マッピングにより心筋虚血部と不整脈の最早期興奮部位が局在できた. 21頭中16頭の不整脈に心表面興奮伝播地図を作成し, 13頭は左室源性, 2頭は右室源性, 1頭では左右両室源性であった. 残りの5頭では, マッピングにより最早期興奮部位を局在せしめた. 左室源性不整脈13頭中11頭は虚血境界域に最早期興奮部位が存在し, そこにより興奮波は波状に伝播していた. 2頭では2つのepicardial focusが存在した. 右室源性3頭では虚血部よりやや離れて最早期興奮部位が存在し, そこより興奮波は同心円状に伝播していた. 心表面最早期興奮部位において, 心室ペーシングを行い, 四肢誘導でのQRS波形を不整脈QRS波形と比較し, 全例において両者がほぼ一致することを確認した. さらに4頭において心表面最早期興奮部位に多極針電極を刺入し, 同部心筋内より双極誘導を採取した. 正常洞調律及び右室源性1頭では心内膜側から心外膜側への興奮伝播が得られたが, 左室源性3頭では心外膜側から心内膜側への興奮伝播が認められた. 不整脈の得られた21頭全例に, 心表面最早期興奮部位を中心とした2~3cm幅の心室全層におよぶ心室小切開を施行した. 21頭中, 左室源性不整脈6頭(28.6%)に切開直後より不整脈の完全消失を得た. 残りの15頭にはさらに心表面最早期興奮部位を含む心筋楔状切除を追加したが, 不整脈の寛解は得られなかった. 本研究で対象とした心室頻拍および心室性期外収縮は心表面マッピング所見より発生機序として, 心筋虚血部位ないしは正常心筋部位との境界域の比較的限局した部位に発生し, 興奮波は正常心室表面を同心円状ないしは波状に伝播するものと考えられる. 多極針電極所見からは左室源性不整脈は, 心外膜側に近く発生し, 右室源性不整脈では逆に心内膜側より発生するものと考えられる, 心表面最早期興奮部位での心室小切開によりこの実験的不整脈は完全に制禦でき, 心室性不整脈に対する外科治療の可能性を示した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心室性不整脈, 心室頻拍, 心表面興奮伝播図, 心表面マッピング, 心室切開
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