Abstract : |
教室においては1979年5月以降, 従来の非血液性心筋保護液(以下CC液)にかわり新たに(1)さらに良好なる保護効果をもつ(2)CC液の大量使用時にみられる人工心肺潅流血の過剰希釈を避けることができる, 等を期待して, 血液性心筋保護液(以下BC液)の臨床使用を開始した. BC液使用群のうち, 前期4ケ月間においては追加潅流液にもカリウムを付加したが(BC1液), 後期4ケ月間においては付加しなかった. (BC2液)そこでCC液, BC1液, BC2液の3液について種々比較, 検討した結果以下の事が判明した. 1. 心筋保護効果についてはBC2液≧CC液>BC1液の順に良好なる結果を示した. 他群と比較してBC1液は, 術後不整脈, 血清酵素値, 心蘇生状態などの点からみて保護効果は不良であった. それに対してBC2液はCC液と比較しても良好なる保護効果を示した. とくにBC2液使用群においては術後不整脈の発生率は低値を示す傾向にあった. そしてBC1液において不良な結果が得られた原因としては, 同液におけるカリウム濃度の不均一性, とくに高濃度カリウムによる心筋障害が疑われた. 2. 体外循環中の血液使用量に関しては有意差はみられないもののCC液使用群に比しBC液使用群が低値を示す傾向にあった. また体外循環開始30分後のヘマトクリット値に関してはCC液使用に比しBC液使用群が有意に高値を示し, BC液は体外循環開始後の急激なヘマトクリット値のおちこみを防ぐ意味で有用な手段と思われた. 3. 術後12時間, 20時間の血清カリウム値はCC液使用群に比しBC液使用群が有意に低値を値を示し, BC液は術後高カリウム血症を予防する意味で有用な手段と思われた. そしてこの原因としてはBC液中カリウムの血球内あるいは心筋内へのとりこみが考えられた. |