アブストラクト(28巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 鎖骨下動脈基部形成術を併用したBlalock-Taussig短絡手術
Subtitle : 原著
Authors : 横田通夫, 村岡隆介, 青嶋実, 野本慎一, 曲人伸, 小林彰, 中野博行*, 上田憲*, 斉藤彰博*
Authors(kana) :
Organization : 静岡県立こども病院心臓血管外科, *静岡県立こども病院循環器科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 8
Page : 1207-1214
Year/Month : 1980 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 近年新生児期, 乳児期早期においてもBlalock-Taussig短絡を体肺動脈吻合の第一選択とする意見が出てきているが, われわれも同様の意見である. われわれは, i)一般に肺動脈は右側が左側より太い例が多く, 将来の根治手術のためには左側に吻合して細い左肺動脈をより発育させておくことが望ましい. ii)吻合操作中に太い方の右肺動脈を遮断することは危険な場合があること, iii)短絡を必要とするチアノーゼ性心疾患においては上行大動脈が太く右上方に突出しているものが多く, 左大動脈弓の場合, 右側Blalock-Taussig吻合は手技的に比較的難しい場合が多い, などの理由で短絡は左側において行うことを原側としている. 右大動脈弓でなく, 鎖骨下動脈が短かい場合は, 鎖骨下動脈基部に形成術を施して, 動脈の屈曲を防ぎ, 同動脈の第一分枝の太い部分で吻合することにしている. 生後3日目および6日目の症例を含む18例のBlalock-Taussig短絡症例の内訳は, ファロー四徴症9例, 左室流出路の狭窄ないし閉塞を伴う完全大血管転位症5例, 肺動脈狭窄を伴う三尖弁閉鎖症4例, および肺動脈弁閉鎖症2例である. 鎖骨下動脈基部形成術を施行した7例中, 術中短絡量を測定しえた5例の平均流量は1354ml/min/m2で, 右大動脈弓症例の平均流量1299ml/min/m2と大差なかった. 18例中短絡量を測定しえた12例の平均流量は1380ml/min/m2で, 三尖弁閉鎖症の2例に術後ジギタリス剤の投与を必要としたが, 全例チアノーゼ, 運動能とにも著しく改善した. 18例中手術死亡はないが, 多脾症を伴う1例を術後2ヵ月敗血症で失った. 術後平均10.6ヵ月の遠隔成績では, Gore-Texグラフトをinterposeした1例をのぞいて全例強い短絡雑音を聴取している. Blalock-Taussig短絡では, とくに乳幼児で充分な流量が得られないことが多く, この鎖骨下動脈基部形成術の併用は有用な方法と考える. 本文中ではBlalock-Taussig短絡以外の, 大動脈肺動脈吻合例の2例を含めて検討した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : チアノーゼ性心疾患, 体肺動脈短絡術, Blalock-Taussig短絡流量, 鎖骨下動脈基部形成術
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