アブストラクト(28巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 低体温法による乳幼児開心術後の脳神経障害ならびに精神身体発育に関する臨床的研究 第I編 低体温法による乳幼児開心術前後の脳神経障害の検討
Subtitle : 原著
Authors : 伊藤孝, 堀内藤吾
Authors(kana) :
Organization : 東北大学医学部胸部外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 8
Page : 1215-1221
Year/Month : 1980 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 乳幼児期の先天性心疾患の開心根治手術に対し, 低体温法は, より若年例, より複雑例の根治手術を可能にした補助手段として, 近年著しい発展を示している. 反面, 循環遮断に伴う脳神経障害の発生が危ぶまれており, その防止のための方法が種々考えられてきた. そこで, 教室で行っている低体温下開心根治手術例において, 手術前後の精神機能ならびに脳神経障害の検討を行った. 対象は, 1974年から1978年までの心室中隔欠損など単純心奇形を対象とした25℃で30分間遮断する低温冠潅流法の11例(平均15ヵ月, 7kg), 大血管転位症など複雑心奇形を対象とした18℃で60分間遮断するバイパス超低体温法の18例(平均3歳, 11.5kg)である. 低温冠潅流法は, エーテル深麻酔, 表面冷却により咽頭温を25℃とし, 平均27分の循環遮断を行い, 約3分間の冠潅流により心蘇生の後, 34℃まで表面加温を行った. バイパス超低体温法は, エーテル深麻酔, 27℃まで表面冷却の後体外循環により17℃まで中心冷却を行い, 平均51分の循環遮断の後, 34℃まで中心加温を行った. 検査は, 術前および術後1~3ヵ月に, 神経学的検査と同時に脳波検査, 発達係数あるいは知能指数の測定を行った. 神経学的検査, 脳波検査では, 1例に術後低カルシウムに起因する痙攣発作および異常脳波を認め, また73分の遮断を余儀なくされた1例で, 術後一過性の異常脳波を認めたが臨床的に発作なく, 他の27例では術後新たな異常所見の発生はみられなかった. 術前合併症を有した1例を除く28例の発達係数, 知能指数は, 手術前後で有意差を認めず正常範囲内であった. 4分野の発達係数の比較では, 有意の低下をみたものはなかった. 以上より, 25℃で30分, 18℃で60分以内の循環遮断では, 術後早期に神経学的異常や脳波異常などの脳神経障害は認められず, また知的発育の障害も発生しないと結論された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 低体温法, 乳幼児開心術, 脳神経障害, 発達係数, 知能指数
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