アブストラクト(28巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高濃度カリウム心停止液の血清カリウム値, 末梢循環動態および術後の不整脈におよぼす影響
Subtitle : 原著
Authors : 荒木威, 提島正, 生駒義人, 佐々木成一郎, 中村和夫
Authors(kana) :
Organization : 鳥取大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 9
Page : 1358-1364
Year/Month : 1980 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Potassium induced cardioplegiaは開心術中の心筋保護法の1つとしてその有用性が認められているが, Cardioplegic solutionが心腔内血液とともに体外循環回路内に回収された場合には, これが高濃度のカリウムを含有する液であるために, 体外循環中の血清カリウム値や末梢循環動態に何らかの形で影響し, あるいは術後の不整脈発生とも関係するものと思われる. この点に関して, われわれはPotassium induced cardioplegiaのもとに開心術が施行された77例の症例に対し検討を加え, その結果, 次のような結論に達した. (1)体外循環中のカリウム回収量が1.0~1.6mEq/kg/hrであって, かつこれが体外循環の最初の2時間までであった場合は, 術後に重篤な高カリウム血症がもたらされることはなくCardioplegic solutionの体外循環回路内への回収に, とくに問題はなかった. (2)しかしながら, Cardioplegic solutionが吸引回収されることによって, カリウム量が1.0mEq/kgであった場合は, 体外循環中の全末梢血管抵抗が上昇して, カリウムが末梢血管に対して収縮的に作用することが明らかとなった. この現象はカリウムが持続的に1.0mEq/kg/hr以上の大量, あるいは0.9~1.0mEq/kg/hrの中等量が投与された場合にも認められたが, 0.9mEq/kg/hr以下の少量投与例では認められなかった. しかし, これは術中の血液ガス分析からみて, 組織のOxygenationに特別な不利益をもたらすものではなかった. (3)57例のカリウム大量投与例(1.0~1.6mEq/kg/hr)では心室性期外収縮を含む重篤な不整脈の発生は認められず, 一方27例の少量投与例(1.0mEq/kg以下の一括投与)では3例に術後早期に心室性期外収縮の発生が認められ, カリウムの大量投与の意義がみとめられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 体外循環, カリウム心停止液, カリウム代謝, 末梢循環動態, 術後不整脈
このページの一番上へ